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疑わしい者は大抵、ここへ連れて来た途端に自制心を失い取り乱す。
太陽の届かない通路。閉ざされた空間。各部屋に残された拷問の跡。
これらを見れば"次は自分の番だ"と疾しい考えを持つ者は誰でも安易に想像がつく。
だがエリスは違った。
アルベルトの投げかける声にどこまでも淡々と答え、恐怖心や不安を微塵も感じさせない。
「……。少し遊ぶか?」
「…いいですよ。悪趣味ですが」
拷問具を備えた部屋に入ってもエリスは平然とそう答え、壁から吊り下がる手枷の鎖を指で鳴らした。
(本当に間違いないんだろうな…エドリオ?)
エドリオの直感や読みは今までに一度だって外れたことはない。
だからこそ彼には絶大な信頼を置いていたアルベルトだったが、今回ばかりは自分と彼の判断に疑念を抱いていた。
────もし自分達が間違っていたら?
その時は取り返しがつかない。
「アルベルト様?」
「!あぁ…、気に入った物でも見けたか?」
「気に入ったというか……、これが一番まともでは?」
アルベルトが思案している間にエリスは部屋の中を見回った末、最初に触れた手枷に再び触れる。
直接肌に当たるベルト部分が何かの皮で出来たそれは、随分使い込まれてはいるが頑丈なのか損傷は見られない。
「だったらそれにするか。両手を出せ」
エリスがその声に応じて素直に両手を差し出すとアルベルトは慣れた手つきで彼の自由を奪う。
「よく似合っているな」
「…。誉め言葉になっておりませんよ」
「無論。そのつもりはない」
「っ──!?」
アルベルトはニヤリと笑い、柱から垂れ下がる鎖を引いた。
すると側にあるリールが回り、エリスに付けられた手枷の鎖が金音を響かせながら引き上げられ彼の足は見る見る内に宙へと浮く。
「アルベルト様…!」
「いい眺めだな…。お前は何をさせても絵になる」
「冗談は止めて早く下ろして下さい!」
身体の重みが両手首に掛かりギシギシと唸るような痛みを上げれば、さすがに平然としていたエリスも表情を変える。
だがアルベルトはそんな彼を見て子供のような笑みを作った。
「なぜだ?楽しい"遊び"はこれからだろ?」
一目見た時から…アルベルトはいつも彼を求めていた。
それは美しい仮面の彼ではなく、その下に隠された本当の彼を。
しかしなぜ自分はここまで彼に執着しているのか。それはまだ本人ですら気付いていない。
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