アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
4
-
早朝から始まった議会はまだ続いているらしい。
部屋に夕食を運んできたエリス付きの召使いに問うとすんなりその答えが返ってきた。
彼女はエリスの世話係であり、彼がここへ来て以来の付き合いだ。
そのせいもあって彼女はエリスにとって唯一の親しい友人のような存在でもあり、気軽に言葉を交わすようになったのは今に始まったことではない。
「もしかして夜が更けてもこのまま続くの?」
「どうでしょうか…。確かにその様な事も度々ありますが私には何ともお答えかねます」
「そう…だよね。仕方ないか…」
"夜にまた来る"と言ったアルベルトは嘘を吐いたわけではない。ただ、来られなくなっただけだ。
エリスがそれに少し気抜けすると召使いは純粋な眼差しで彼を覗き込んだ。
「もしかして…がっかりされてますか?」
「え?…………違うって!?単に忙しいんだなぁって思っただけで…!」
「ふぅん…そうですか。へぇー」
「なっ、何その言い方…」
歳が自分と近いこともあり、エリスと二人だけの時は極力普段通りに接するよう頼んでいた。
その方が何かと情報も聞き出しやすく彼にとって有利だからという理由だったが、今となってはエリスの良い息抜きにもなっていた。
そんな彼女はあからさまに何か言いたげな様子でくすくすと小さく笑う。
「だって、お気づきになっておられないんですか?以前のエリス様はアルベルト様がお部屋にいらっしゃると気が立っておられましたが、今は来られないと分かった途端がっかりしたご様子ですよ?」
「そんな事…!……無いと思うけど」
(オレ、なんでこんなに焦ってるんだ…?)
勢い良く否定しようとした自分に気付き、エリスは一度呼吸を置いて落ち着いた口調で続きを述べた。
確かにおかしい。何かがおかしい。でもそれが何なのかはやはり解らず、エリスは誤魔化すように並べられたパンを口に頬張る。
東ローマを操るこの国の決断に感心があるだけだ。
エリスが自分にそう言い訳して納得しようとした時、ノックも無く急に荒々しく開け放たれたドアに驚いた二人は飛び上がるようにしてそちらを振り返った。
「あぁもうやってられるか!!」
「アル!?議会は終わったの?」
「終わる訳ないだろ!あんな頭の固い奴らだらけの議会なんだぞ!」
「そんな事オレに言われても……」
自分の隣にドカッと腰を下ろし果物に手を伸ばすアルベルトを見てエリスは苦笑いを浮かべる。
恐らく議会を抜けてきたのだろう。
「仕方のない人だなぁ…」
「っ!」
簡単に想像がつく彼の言動に擽られたような感覚を覚え、エリスは無意識の内に不機嫌なアルベルトの髪に手を伸ばしていた。
誉めるでも心配するでも無いエリスは彼の髪を何度か優しく梳いていたが、召使いとアルベルト、二人の驚愕した視線にピタリと動きを止めて途端に頬が赤くなっていく。
自分は今、何をしている?どういう気持ちで髪を撫でた?
もちろんどちらの問いにも答える事は出来ない。
「お前…」
「あ!あの…っ!アルにお酒…!も、持ってきて!」
「…はい、かしこまりました」
アルベルトの言葉を遮ってエリスが誤魔化すと命令を受けた召使いは意味深い笑みを残して部屋から出て行った。
だが召使いを追い払ったこの判断が間違いであった事にすぐ気付く。
「……お前に聞きたい事がある」
エリスの肩を掴んで正面を向かせたアルベルトは真剣な顔付きで、彼の様子を窺いながらも少し目元を赤く染めていた。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
39 / 79