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A moonlight night.1
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「オレ……出たくない」
用意された鮮やかな衣装に身を包み、それでもエリスは不満げに唇を尖らせる。
「そうか、分かった。だったら俺も行くのは止めよう」
「!……行くよ…行けばいいんだろ…」
「別に無理する必要はないぞ?」
「あるよ!大あり!だってオレが行かなきゃあなたも行かないんでしょ!?」
「ああ」
「…………」
エリスはニコリと笑うアルベルトに眉間の皺を寄せ、やがて諦めの溜め息を吐いた。
西との休戦の証として開催する事になった宴は今夜だ。
王族や貴族、それに役人など階級が比較的高い者のみが集うこの場になぜ自分が行かなくてはならないのか。
それは完全にアルベルトのわがままが押し通った結果だった。
猛反対していた役人達は"エリスの踊りを余興として行う"との皇子の提案で渋々ながらも承諾してしまい、例によってエリスは今、その準備をさせられている。
「あのさ…オレの踊りはただの見世物じゃなく、"生きる為の手段"なんだ。だから余興としては向かないと思う。言ってる事…分かる?」
「…客寄せだろ?」
「……うん」
今まで人前で踊った事は数知れず。だが多くても二十人程度のものだ。
そしてその中の観客に声をかけられて身体を売る。
本来の目的は踊りではなく売春であり、その為の踊りだ。
「自信がないのか?」
「そうじゃなくて…!」
「なら問題はない。お前の舞いは誰よりも繊細で優雅だ。観客の目が気になると言うのなら俺だけを見ていろ。そして俺だけの為に舞え。必ず上手くいく」
エリスの舞いを何度も間近で見ているからこそアルベルトは確信を得ていた。
西のやつらは必ずエリスの踊りに心奪われ陶酔する。
「エリ、俺は西のやつらにお前を自慢したいんだ」
「っ、自慢できる程のものなんてオレには…」
「そういう意味ではない。まぁお前の舞いとその美麗さは自慢に匹敵するが、俺が知らしめたいのはお前の存在そのものだ」
「存在…??」
「ああ。俺はエリスという特別なものを見つけた…何を引き換えにしていいくらいのな。そんな今の俺がいかに幸運かを自慢してやる」
「っ!!アルって…キザ、だよね」
「ん?俺は思った事をそのまま口にしているだけだぞ?」
「もういいから…!それ以上言わないで、こっちが恥ずかしくなる…」
不思議そうに首を捻るアルベルトに背を向け、エリスは熱が集まる顔にブルカ(※)を着けてそっと隠した。
※ブルカ=口元を隠す布
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