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賑やかな大広間には一体何人の客人達が集まっているのか。
数人の踊り子達と共にアルベルトの後に続くエリスは、ドアを開ける前から聴こえてくる談笑の声にエリスは少し緊張気味に眉を下げる。
「心配するな。全て上手くいく」
アルベルトの自信に満ちた声はエリスの不安を少し和らげ、緊張を解した。
(大丈夫。オレはオレらしくいつも通りに振舞えばいいんだ)
エリスはドアの前で一度深呼吸し、ゆっくりと開けられたその隙間から差し込む眩い光に毅然とした目を向けた。
「遠方よりお越し頂いた皆様、今宵はこの宮殿にて夢の様なひと時をお過ごし下さい」
贅が尽くされた豪華な部屋に見劣りしない煌びやか衣装の踊り子達を引き連れたアルベルトに会場中の目が向く。
そしてその台詞を合図に踊り子達は予め設けられていた場所に移動した。
「…………」
その中で一番最後まで残ったエリスは無言でアルベルトに視線を送り、それに対して彼は軽く頷いてみせる。
エリスにはそれだけで十分だった。
(あの人も来てるのかな…)
他所事を考える余裕すら持ち合わせ伏せ目がちに踊り子達の中央へ移動したエリスは静かに顔を上げる。
すると奏で始めた楽器の歌声に身を任せ、腕に垂らした布をふわりと旗めかせて身を翻した。
「おぉ…!中央にいるあの者は一体…」
「あれは……男か!?」
「こんなに見事な舞いは初めだわ…」
演奏に交えて聴こえてくる声は男女問わず、皆うっとりと目の前の余興に見とれていた。
指先にまで気を配る細やかで悠々とした仕草に加え切れのある動きで一つ一つの振りを丁寧にこなす。
アルベルトの予想通り、会場内の誰しもがエリスに目を奪われていた。
「いつも以上の出来栄えだったな、見事だ」
「恐れ入ります。でもオレはあなたに捧げたつもりだけど」
「あぁ、気付いたよ。ずっと俺を見ていたな」
踊り終えた一行に近付いたアルベルトは彼女達を労い、最後にエリスへと目を向け頬を撫でた。
エリスは言わば自分のお気に入りだ。
それを周りに見せびらかせば、さぞかし気分がいいだろうと思っていた。
だが実際は違う。
数え切れない欲に満ちた目が今もエリスに纏わり付いて離れようとしない。
それを不快に思った彼は待ちきれず自らエリスへと近付いた。
二人の関係を知り得ていない者が迂闊に近付かないようにとの防御線の意味もあるが、アルベルトは少しでも早く彼に触れたかったからだ。
「実に見事な余興でしたなぁ、アルベルト皇子!」
「!えぇ、お気に召して頂けたのなら何よりです」
親しげな口調で二人に近付いたのは、肥厚した腹が目立つ体系の男だった。
だが特に面識も無かったアルベルトは言葉を正して無難に返事をするが、男はその場を離れようとはしない。
「これは失礼。私は西の皇帝の付き添いでこちらに出向いたブルーノと申します。以後、お見知りおきを…」
ブルーノは軽い会釈をして友好的な態度を見せたが、アルベルトは探る姿勢を崩さず目を細める。
「そうでしたか…。今宵はぜひお心行くまでおくつろぎを…。ではまだ挨拶が残っておりますのでこの辺で失礼致します」
「どうぞどうぞ。私の相手はこの青年に任せて、皇子は挨拶回りをされて下さい」
「なっ…!?」
エリスの腕を掴んでさり気なく立ち去ろうとしたアルベルトはブルーノの提案に目を大きく開き驚愕した。
最初からこの男の目的はエリスだったのか…。
だが西の客人とあらば足蹴にもできない。
「っ…、アルベルト様、痛いです…っ」
「!すまない…」
憤りを堪えるあまりアルベルトの手はいつの間にか白くなる程エリスの腕を強く握っていた。
どうにかこの場からエリスを連れ去る方法はないか。
小声で謝った彼の口元は笑っているが、相変わらず不快な笑みを浮かべるこの男を殺意の込めた目で睨みつけている。
エリスはそんなアルベルトの手に自分の手をそっと重ねて笑顔を見せた。
「オレなら大丈夫ですから…、あなたは自分のやるべき事を行って下さい」
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