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Dazzlin.1
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閉じた瞼の外で白い光がチラチラ揺れる。
……眩しい。
心地良い風が黄金の髪を撫で、アルベルトはやっと薄目で瞬き隣に手を伸ばした。
「……ん…エリ…?」
「おはよう。良く眠ってたね」
その声は探る手からは程遠い場所から聞え、アルベルトは勢い良く飛び起きた。
「お前、いつ起きたんだ?」
「うーん…、鐘の音で目が覚めたから結構前かな。でもまだ昼前だよ」
窓を開けて緑の風を部屋の中に入れるエリスを、気まぐれに舞うカーテンがふわりと撫でる。
そんな彼は穏やかな表情なのにアルベルトの目にはなぜか悲しそうに映った。
エリスは今、何を想っているのだろう。
翡翠の瞳が憂いで見上げた空を高く自由に泳ぐ一羽の鳥が儚い歌声で鳴く。
まるでエリスが今にも飛び立ってしまいそうな雰囲気を感じ、アルベルトは不安になってベッドから起き上がった。
「!?アル……?」
「……なんでもない」
そんな事あるはずがないと思いながらも彼はエリスに触れられずにはいられなかった。
そして背後からエリスを抱きしめると温もりが伝わりやっと安心できる。
────失いたくない。今度こそ。
想いを込めて包み込むアルベルトの腕の強さに驚き、エリスはくるりと彼を振り返った。
「恐い夢でも見た?」
「いいや、幸せな夢しか見ていない。…だから尚更恐いんだ」
「…!」
彼の予想外の答えにエリスは言葉を失うが、そっと片腕を回し広い背中を撫でる。
こうされれば少しは気持ちが落ち着くはず。
エリスはその事を知っていた。
「エリ……、!?なぜナイフなんか…?」
「え?…ああ。祈ってたんだ」
「祈る?」
下げていたアルベルトの視線にエリスの左腕が映り込み、鞘に収め握られたナイフの柄が小さく光る。
これはエリスが宮殿へ来た時から持っていた物だ。
「うん。毎朝陽の光に当てて祈ってるんだよ。…これはあの人の形見なんだ」
「!そうなのか…、知らなかった」
「そりゃそうだよ。あなたが職務に向かった後やってたから。でも…このナイフの事を誰かに話したのは初めてだな…」
そう言ってエリスはまた、悲しそうな笑みでナイフに目を落とした。
自分の過去をあまり話したがらないエリスが自ら語り出すのは珍しい。
それは自分達の関係が良い方向を向いている何よりの証拠だ。
例えエリスにとって想い出を語るのがどれ程辛い事かと分かっていても、アルベルトは秘かに心を躍らせる。
エリスをもっと近くに感じたい…。
「…………行くぞ」
「え?行くってどこに?」
「街だ。今日は確か市が開催されてる」
エリスは彼の言葉にもう一度窓の外を見た。
すると確かにいつもより賑わっている気がする。
「だったらエドさんに伝えてくるよ」
「バカ。あいつに言ったら護衛だの何だのって言い出して息抜きにならないだろ?二人だけで行くんだよ」
「はぁ…!?何考えてっ、ちょっと待ってよアル!せめて着替え!」
アルベルトの身勝手にエリスはいつも振り回される。
だが結局いつもその腕を振り解けず従ってしまうのはなぜだろう。
手早く着替えを済ませたエリスは部屋を出る前にふと振り返り、少し躊躇してから台上に置いたナイフに手を伸ばした。
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