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「!?……そうだね。ベッドの中でのあの荒々しさ、好みだよ」
エリスの答えにアルベルトの口元が弧を描く。
二人の場違いなやり取りは目の前の出来事から目を逸らしたものでは決してない。
むしろこれからの行動を予感させるものだった。
「行くぞ。お前は少し離れていろ」
「うん」
交わった細い路地の二通り先。
軽く静かな足取りでそこを左へ曲がると、すぐ近くの空き家の裏からそれらしき音が聴こえた。
アルベルトはエリスに目配せをして待機させ、足を忍ばせて様子を伺う。
すると女性を囲む数人の男達はナイフをちらつかせていた。
それに対しアルベルトは何も持っておらず無防備な状態だ。
(話し合いが通じる相手だとは思えない。あなたはどうするつもり?)
エリスは何かを見定めるように彼に目を向け、ある一つの可能性を見出した。
もしここで彼が死ねば────。
「っ……」
"死を恐れるな"
そう刷り込まれているエリスは恐怖など感じない。
そんな彼に単なる可能性の一つが初めて"怖い"という感情を生み出した。
ここでアルベルトが死ねば自分の役目は終わる。どさくさに紛れて殺してしまうのも好都合だ。
しかしそれは彼との永遠の別れ……。
「……!!」
迷いが生じた自分に混乱したエリスはひとまず持ってきていたナイフをアルベルトに渡そうと考えたが、それよりも一足早くアルベルトが空き家の裏へと消える。
(まずい……!!)
アルベルトに待機を促された事も忘れて後を追ったエリスだったが、目の前に広がった光景に足を止めて目を疑った。
「あ…っ、ありがとうございます…!!」
「礼には及ばん。さっさと立ち去れ」
何事も無かったようにアルベルトは涼しい声で女性にそう告げていた。
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