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「何がどうなって……っ!?」
アルベルト達から目を離せば、地面に這いつくばって呻き声をあげる男達の姿がある。
…………この人数をやったのか?あの一瞬で?
「ッ……く…そ……っ、この野朗……!!」
背後で倒れていた男が辛うじて立ち上がり二人にナイフを向けた。
「っ!!」
「屈め!!」
エリスは咄嗟に女性を庇ったアルベルトにそう叫ぶと何の迷いもなく忍ばせていたナイフを抜き放つ。
それは屈んだ二人の頭すれすれに通り過ぎ、男の服を貫いて背後の樹木へ突き刺さる。
「ひっ…!た、助け……っ」
「止めろエリス!!」
「!?…なぜ?」
エリスがその男に歩み寄って木から抜いたナイフを振りかざした時、アルベルトはそれを制した。
残忍で冷血なはずの男が自分に危害を加えようとした相手を生かす。
これは何の冗談なのかとさえ考え、エリスは疑問に思う。
だがその答えを聞く前にバタバタこちらに駆けてくる重い足音が聴こえ、アルベルトが舌打ちをする。
「憲兵か…。行くぞエリ、厄介事は御免だ」
「あの…!もしよろしければ騒ぎが収まるまで家へ!家は宿屋をやっておりまして、空いている部屋があります!そこでしばしを身をお隠し下さい!」
「!そうか。なら案内しろ」
「はい!」
アルベルトに助けられた女性の申し出を受けた二人はその場所から少し離れた所にある宿屋の一室へと案内された。
そこへ移動している間も、部屋に案内された今もずっと、エリスは重く口を閉ざしアルベルトと目を合わせようともしない。
それは二人の間に見えない沈黙の壁がそびえ立つようだった。
「……なぜ殺そうとした」
その壁を最初に打ち砕いたのはアルベルトの低い声だ。
自分は責められているのだろうか。悪い事をしただろうか。
エリスは二階に位置するその部屋の窓から通りを見下ろしたまま口を開く。
「なぜ生かしたの?」
正反対の疑問は二人の間に溝を作り、どちらもそれに答えることなく静かに時は流れていった。
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