アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
Black flower.1
-
「雨、よく降りますね」
「……うん」
世話係の声に空返事で答えたエリスは窓の外をただぼんやりと眺めていた。
何の面白味もない黒く淀んだ雨雲は大粒の雫を降らせ、それは視界を遮るカーテンのようだ。
何もかもを覆って濁らせ見えなくする。
いっその事、自分もその一部になればいい。
エリスがそう考えるには訳があった。
「アルベルト様……今夜も来られないのでしょうか…」
「…………だろうね。きっと飽きたんだよ、オレに」
「そんな事はっ…!」
「無いって……どうして言い切れるの?あの人は元々気紛れだよ?」
自傷じみたエリスの声に世話係は言葉を詰まらせる。
市に出掛けた日を境に、アルベルトがエリスの部屋を訪れる事がなくなった。
だが彼の性格を知る者から見れば良く保った方だ。
飽きやすく常に刺激を求めるタイプのアルベルトは相手がどんな人物であれ、長期間手元に置いていた試しがない。
「いいんだよ、別に。……ううん、この方がいいんだ……」
「エリス…様…?」
自分は彼に近付きすぎた。
いずれこの手で消してしまう存在だと理解していながら、心のどこかでは彼に近づく事を望んでしまった。
でもそれは単なる興味本位。
そして今胸にある痛みは己の役目を疎かにしたその報いだ。
そう痛みの理由を無理やり納得するものに置き換えていた時、ドアをノックする乾いた音が響いた。
「失礼します。エリス様に贈り物が届いております」
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
55 / 79