アダルトコンテンツが含まれます。
18歳以上ですか?
- 文字サイズ:
- 行間:
- 背景色:
-
3
-
バタバタと慌ただしい足音が聴こえる。
だがエリスの瞼は鉛のように重く、決して開こうとしない。
その代わり彼は耳を澄ませ、周りの音を聴き逃さないようにしていた。
「────エリスの容体はっ!?」
「アルベルト様…!…はい、蛇からして毒は然程強いものではないかと。先ほど解毒効果のある薬草を飲まれましたので、この熱が下がれば問題はありません」
ドアを壊さんばかりの勢いで騒々しく部屋に入ってきたアルベルトは医者の説明を受けながらベッドで横になるエリスを見て心を傷めた。
もし自分が側にいればこんな事にはならなかったはず。
なのになぜ自分は彼と距離を置いた?
「皇子!まだ職務の途中です!」
アルベルトの後を追って入室したエドリオの声からは焦りが滲み出ている。
エリスの報告を耳にした時、彼にはアルベルトがどういう行動に出るのか分かっていたからだ。
「職務だと…?これ以上こいつを放っておいて?」
「……お気持ちはお察し致します。ですが今、我々がここに残っても出来る事はありません。生きるか死ぬか、それは彼の生きる力次第です」
「っ……。例え何の役に立たなくとも、俺はこいつの側にいたいんだ…!なぜそれが許されない!?」
耳に入ってくる会話を聞いてエリスは心のどこかで安堵した。
アルベルトは自分を嫌った訳じゃなかったんだ。
怪我の功名と言うべきか、その事が何よりも嬉しい。
「っ……ア…ル…ッ」
「っ…!!エリス!」
熱に冒されて目が熱い。
本当は開ける事すら困難なはずの瞼をうっすら開き、ぼやける視界の中でしっかりアルベルトを捉えた。
「オレ……大丈夫…、だから…」
「何が大丈夫だ…ッ!俺がいないとろくな事にならないくせに!」
「……ごめん、ね。でも…すぐ…元気になるから。だから……、あなたは自分のやるべき事をやって……っ!」
「エリ!?」
毒が回った身体は節々から悲鳴を上げ、その痛みから時折エリスは顔を歪める。
"俺はどうするべきだ?"
アルベルトは自分の所望と答えるべき要求の狭間で頭の中が深く混濁した。
現在の設定
文字サイズ
行間
背景色
×
57 / 79