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after the rain.1
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「────よし。この起案で相手の出方を探る。エド、これが明日の朝にやる最後の仕事だったな?」
「……はい。お疲れ様でした」
何日か降り続いた雨が上がり、黒く厚い雲間から月明かりが細く差している。
ランプの光がほのかな夜風に揺れて雨の匂いを運ぶが、それは清々しくアルベルトの鼻先を擽った。
「昼頃にはお前の部屋に顔を出す。それまでは俺の自由にさせろ、いいな?」
「彼の所へ…行くおつもりですか?」
「……エド」
「そんなに彼が大切ですか…っ、私よりも……」
二人は体の関係を持ったことがあるものの、恋人のような認識は互いに持っていない。
それでもエドリオは恋人を引き止めるかのように悲痛な声を上擦らせた。
「俺にとってはどちらも手放せない、大切な者だ。エリスを側に置いていたとしてもお前に対する気持ちは変わらない。俺はどちらも手にしていたいんだ」
「それはっ……あまりにも欲張りですね。あなたらしい…」
「だろう?欲しいものは全て手に入れる。それが俺の信条でな」
「えぇ、あなたはいつもそうだ…。例えその気がなくても手に入れてしまう……そんな星の下にお生まれになった。いつまでも…私はそんなあなたの側に……」
「エド……?────ッ!?」
俯くエドリオを覗き込むと彼は不意に顔を上げた。
そして直後に唇が重なる。
────彼とキスをしたのはいつ振りだったか。
驚きはしたもののアルベルトは抵抗することなく縋るようなエドリオのキスを受け続けた。
「…………申し訳ありません…っ、私としたことが無礼を…」
「いや。それでお前の気が収まるのならいつでも受けよう。エド。お前は俺にとっては無くてはならない存在だ。これからも支えてくれ」
「っ……!!……仰せのままに」
悲しみに満ちた笑顔を浮かべ、エドリオは部屋を去るアルベルトの背中を見送った。
彼は決して自分を蔑ろにしている訳ではない。
むしろその逆であり、彼の中に揺るぎない自分の存在がある事に喜びさえ感じる。
「……ならばこの苦しみは…。焦がれる痛みは一体なぜ…?」
彼に触れた唇がジンジンと熱い。
その熱に答えを見出すように、エドリオは舌先で唇を濡らした。
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