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マッシマの部屋を出たアルベルトは冷静を保とうと懸命に努力した。
だが言いようのない不安と焦り、そして高潮。
「役人達に儀が行われる事を伝えろ。反発はあれば捻じ伏せろ。それとハーレムは、作った張本人が他界次第解散だ。今までの働きに応じてそれなりの褒美を与えておけ。あとは…」
「落ち着いて下さい、皇子。混乱するのは当然ですがどうか心穏やかに。すべき事は分かっております」
それらの感情の波が一気に押し寄せ、行き場のない困惑を隠しきれないアルベルトをエドリオは神妙な面持ちで宥めた。
「あの人が死ねば……俺は本当に一人になる。例えどんな人間であろうとこの世でたった一人の…俺の家族だからな…」
ポツリと零したアルベルトの本音はまるで小さな子供のように怯え、いつもの自信に満ちた表情は微塵もなかった。
それは幼い頃、母親を亡くした後のアルベルトの顔そのものだ。
「私がお側にいます。今までも…これからも」
「エドリオ…」
「あなたを苦しめる全ての物を私が排除致しましょう。あなたは私の全て……何せ人生の半分をあなた様に捧げているのですから」
「……くくっ……そうだったな。俺はお前に育てられたようなものだ。これからもこの国の為、そして俺の為にその身を捧げてくれ」
「はい。仰せのままに…」
片膝を着いたエドリオはアルベルトの手を取り、その甲に忠誠のキスを落とす。
しかしそれは以前までのエドリオにはない行動だった為かアルベルトは漠然とある事を予感していた。
それは得体の知れない"何か"。
今まで以上に強い執着心が彼の心に根付き、それに支配されているような雰囲気さえ醸し出す。
それでも、アルベルトにとって無二の存在であったエドリオを遠ざけるという選択肢は無かった。
例えそれがどんな狂気を隠していようとも────。
「日が昇りきるまではあいつの部屋にいる。少し仮眠を取りたい」
「!……分かりました。議会は夕暮れ前に致しましょう」
「ああ、頼む」
どんな言葉を捧げても、所詮彼の心にはエリスがいる。
それを痛感するしかない現実の中、エドリオはいつもの笑顔でアルベルトの背中を見送った。
「そろそろ……邪魔ですね」
アルベルトの障害になる得るものは排除する。
情けなどいらない。今のエドリオに必要なものはアルベルトからの絶対的な信頼のみ。
それを実現させるだけの材料は十分に揃った。後は実行に移すだけだ。
不吉な笑みに口角を吊り上げるエドリオは、以前からの計画を実行すべく背中合わせで逆方向へと歩きだした。
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