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「────継承の儀?」
情事後の気怠い上体を起こし、エリスは目を丸くした。
「ああ。近い内に俺が王座に座ることになる。そうなれば今以上に多忙極まりない生活を強いられ、お前とこうして過ごす時間も少なくなるだろう」
「……そっか。おめでとう、アル」
「なんだ、"寂しい"などとは思ってくれないのか?今後は、これまで以上に共に過ごす時間が減るというのに」
「っ、思ってるよ!でもこればっかりは仕方ないし……」
アルベルトがいずれ王位を継ぐのを最初から分かっていたエリスは、意地の悪い彼の一言に口を尖らせる。
「お前は物分りが良すぎて少々良い子すぎるな。だが俺は違う。そこでだ。俺が王位を着任した後、お前にそれなりの役職を与える提案をした」
「え?俺に……?む、無理だよ!行政なんてほとんど分からないのに!」
「心配するな、お前は頭も勘も良い。大抵の事は徐々に覚えていくだろう。何も国を納めろと言っているわけではない、もっと気楽にしていろ」
「そう言われても……」
「役職なんて大層な事を言っても、何人かいる俺の補佐官の一人になる程度だ。実際に動くのはそいつらで、お前は俺のそばにいればそれでいい」
気の進まないエリスに対し、アルベルトは意気揚々と笑顔でそう答えた。
どうやら彼は一切引く気がなさそうだ。
「…………分かったよ。あなたが本当にその気なら俺も今から勉強しとかないと…」
「真面目だな。もっと気楽に構えていればいいものを……、だがそこはお前の良いところだ」
普通なら、エリスの立場にある者なら誰でも甘い考えで二つ返事をしただろう。
だがエリスは違う。
彼は"今の自分では相応しくない"と考え、それに対して自分の成すべきことをちゃんと考えた後に首を縦に振った。
アルベルトは彼のそんな所も気に入っていて、誇らしくさえ思う。
その想いは言葉にされる事はなかったが、代わりにエリスの瞼にキスを落とした。
「これからのお前は益々不自由だ。欲深い俺に捕まったのだからな…。だが色んな景色を見せてやろう。だからいつまでも…俺のそばで羽ばたいていろ」
「!……うん」
そろそろ公務の時間だ。
それを知らせる鐘の音を聴き、アルベルトは名残惜しそうにベッドを後にした。
「……ああは言ったものの、勉強するって何を学べばいいんだろ…?」
愛された身体の跡を綺麗に拭い、エリスはそう呟いた。
そして、"常に行動を共にするのであればそれなりの知識が必要になる"と判断した彼は衣服を身に纏った。
(知識といえば書物だよな…。だったら資料室か)
不安がないと言えば嘘になる。
しかしアルベルトが自分に与えてくれた新しい生き方と真剣に向かい合う事を決意し、ひっそりと静まり返った資料室でいくつもの書物を読み漁った。
彼の為であり自分の為。
そう信じて止まないエリスは目の前の事に真剣なあまり、背後に迫る人物の気配に気が付かなかった。
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