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"なぜ?"、"どうして?"
アルベルトの頭の中はその言葉で埋め尽くされる。
──全て嘘だったのか。これまで交わした温もりも愛を囁く声も…。
ナイフを振りかざしたエリスの腕からは相変わらず力が伝わり、それが悪い冗談ではない事を示している。
「何故…、何故だっ…!?」
理由を聞いたところで納得などできるはずがない。
それが分かっていながらも問い質すアルベルトに、エリスは顔を近付けた。そして…
「──あなたが、好きです。心から愛しています」
「ッ…!!」
これから命を奪おうとする相手に切なくに上擦った声で愛を囁き、エリスは初めて自分から唇を重ねた。
その行為でアルベルトは益々混乱を深めるが、それはやがて数人の慌しい足音によって終わりを迎える。
「アルベルト様!!」
「っ!」
捕まれた手首を振り払い、エリスはひらりと身を翻し窓枠に足をかけた。
「──エリス!!」
アルベルトの声に一瞬振り返ったが、彼はそのまま窓から身を消した。
「!?……余程訓練された刺客らしい。屋根を伝って逃げるぞ!追え!」
「はっ!」
窓に駆け寄ったエドリオのその声にホッとするも、アルベルトは呆然として今だベッドから降りられずにいた。
僅かに振り返ったエリスの儚く消えてしまいそうな笑みが目に焼き付いて離れずにいる。
「アルベルト様!」
「…!なんだ…」
「あの者は恐らく西の刺客でしょう。罰は如何ように?」
「…………」
「しっかりして下さい、皇子!!」
「っ、あぁ……。────殺せ」
「かしこまりました。見つけ次第始末しろと兵に伝えろ!」
自分は悪い夢でも見ているのではないか。
現実味のある質の悪い夢だ。
きっともうすぐ目が覚め、何事もなかったように隣にはエリスが寝息を立てているはず。
自分が恋をしたのは刺客などではなく一人の踊り子だと、彼は窓を見つめたまま今起きた事を何度も否定し続けた。
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