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初夏の罪-おそチョロ
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ガタンゴトンと音を奏でる列車
煩いセミの聲
ジワジワと張り付くTシャツ
「チョロ松」
こんなクソ暑い中カタカタと身体を震えさせながら唇を噛む弟の手を取り「降りるよ」と強引に引っ張る
「にいさん」「にいさん」「ねえ」「いたい」
「ねえ」
か細い声に喉仏を掴まれる感覚にビクッと肩が跳ねると同時に足の動きが止まる
ジークジークと鳴いている蝉の声が一層大きくなる
ギュッと握りしめたままの掌がベタベタして気持ちが悪い
「なに」
下を向いて服の裾を引っ張る
伸びるよ、と手を取り顔を挙げさせた
これからどうするの僕達、行くところも頼る人もいないよ
なんて顔に書いてある
「不安?」
「うん」
「俺と二人じゃダメなの?」
「だ、めってわけじゃ」
「じゃあ良くない?」
スゥと息を吸い、
「なんで!お前は、いつも…」
涙と鼻水でグチャグチャになった顔すらも愛しい
「俺もさ、不安じゃないって言えば嘘になるけどさ、チョロ松が隣にいるって思うだけでどうにかなる気がするんだよね」
「でも」
お前が不安になるって知ってまで家を出た俺の気持ち、知ってるかな
親に、兄弟に、この関係がバレてもそれでもチョロ松、お前と一緒にいたいと思ったんだ
「俺らが付き合ってる?ないない!」なんて誤魔化して少しずつ少しずつ俺とチョロ松の関係が恋人から兄弟に変わっていくのが怖かった
だからお前に内緒で新しいスーツおろしてきて朝飯も食わずに家族の前で頭下げたよね、俺、馬鹿だからさ、チョロ松が手振り払わなかった時、まだ好きでいていいんだって確信しちゃったわけよ
馬鹿でごめんね
だから今もこれからもずっと好きなんだよ
ポツリポツリと口から出す言葉の一つ一つを拾い上げるようにグチャグチャだった顔がどんどん酷くなっていく様が面白かった
「チョロちゃん、顔やべえよブッサイク」
「お前だって人の事言えねえからな」
ズルズル鼻を啜りながら軽い口づけを
「永遠を誓うよ、チョロ松」
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