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だって、晩里は俺の前で笑顔を見せたことなんてなかった。
だから晩里から笑顔を向けられるあの1年生が羨ましくて仕方なかった。
「無表情でいないと、感情が溢れだしてしまいそうで……」
時折顔が赤くなってしまうのは、散らかし魔の俺に怒っている振りをして誤魔化した。
「好きです、望夢。あなたが好きです」
顔から頭皮から真っ赤に染めながらも真っ直ぐに目を逸らさずに想いをぶつけてくる。
そんないかにも晩里らしい直球に射抜かれた。
「俺……俺も、初めて晩里を見た時にカッコいいって思ったよ」
何が起こっているのかわからないというかのように晩里は目を見開いた。
目が合うと照れくさかったのかそっと睫毛を伏せたが、頬に滲む喜びまでは隠しきれていない。
「カッコ……いいなんて」
生まれて初めて言われました、と目を輝かせる晩里の魅力に初めて気付いた人間が自分で良かったとつくづく感じた。
そっか。
晩里と笑顔で会話を交わす1年生に何でモヤモヤしたのか、自分以外に「罰則」を与えていないと聞いて何でホッとしたのか、やっと理由が明確になった。
「俺も晩里が好きだよ」
「!」
カッコいいと言った時も相当驚いていたけど、頬が緩んだままついに固まってしまった晩里の前にクッションを二つ放り投げた。
ベッドからスルリと滑り降りると、クッションの真ん中にポスンと着地する。
「よっ……と」
クッションを滑らせるようにクルリと振り返って晩里の方を向いた。
晩里が感極まったかのように硬直しているから、引っ張ってもう1つのクッションに座らせる。
放心状態にあるおかげでか、自分より背の高い晩里の身体も軽々と引き寄せる事が出来た。
「望夢……」
向かい合って座った晩里の手が伸びてくると、そっと俺の頬に触れた。
壊れ物を扱うかのようにそっと触れられるだけでも、そこからゆるゆると熱が流れ込んでくる。
無表情という盾を取り払った晩里から、今まで押さえ込んでいた感情が花開くように溢れ出す。
それは宝箱の隙間から漂うミステリーに満ちた光のようで、スゴくワクワクした。
「望夢……くちづけがしたいです」
飾り気のない言い様が晩里の人柄をそっくりそのまま表していて、愛しいという気持ちがムクムクと膨らむ。
遠慮がちに呟いた言葉だったけど、深い夜のような瞳には情念の燈が灯っていた。
目を閉じるとやわらかな感触が唇に重なって、あっと思う間も無くすぐに離れていった。
やさしい色合いを持った砂糖菓子のようなくちづけの余韻は、じんわりと身体に浸透する。
でも、そんなちょびっとだけじゃあ全然物足りない。
頬をポッと染めて初めてのくちづけの記憶を噛み締めている晩里に自ら身を寄せてキスをした。
カラフルなゼリービーンズのようなキスの味わいは全身をずんずん駆け巡る。
晩里の腕が背中に回って、何度も何度も唇を合わせた。
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