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「…」
俺の視線に気付いたように、紫音もそこに視線を向ける。
「…あ、ごめん。心配で、つい」
ぱっと紫音が手を離す。
…何だろう、寂しい。
「奏汰の事家まで送ったら…そしたらもう、あまり関わらないようにするから」
「ッ…俺は…」
「あっ、柊さん起きましたか?」
看護師さんが俺に声を掛けてきた。
…タイミング………
「はい、さっき」
「よかった。結構重度の熱中症にかかってたのよ。心配したけど、元気そうでよかったわ」
もう少し、休んで調子が良ければ帰っていい事になった。
「…」
「…」
お互いに、何かを言うことなく時間が過ぎていく。
それは、帰り道でも同じことだった。
夏らしい空気。夕日が差し込み、辺りがオレンジ色に染まっている。
俺はただ 道に伸びている影を見ながら歩いていた。
…紫音は、今何を思ってるんだろう。
紫音は俺の事を……
じゃあ俺は?
モヤモヤ考えてるうちに、俺の家に着いた。
「紫音、送ってくれてありがとな」
「うん。お大事にね」
帰る途中で寄った薬局で買った、冷えピタとかスポーツドリンクなんかを渡される。
「じゃあ、俺はこれで」
紫音が来た道を戻るように、振り返る。
いつもみたいに、"またね"では無かった。
それはもう俺には関わらないという紫音の意思表示なのかもしれない。
このまま紫音と別れたら、もう傍には居てくれなくなる。…俺は…
紫音の背中が、とんどん小さくなっていく。
「ッ…待って、紫音!!」
考えるよりも先に、体が動いていた。
…家の前には散乱した薬局の袋。
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