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止まらない年月
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俺も今年で三十路に入った。
就職して入った仕事場はしんどいながらも、辛くはなかった。
高校2年生、その時は就職ではなく進学を考えていた。
通っていた塾は厳しく、それでもなんとか頑張った。
塾内トップ成績だったアイツが、幼馴染みのアイツが。
しんどい時には、ずっと俺のことを励ましてくれていた。
大丈夫、お前ならできる、いけるって。
その応援のかいなく、俺は最終的に就職することになった。
アイツはもちろん進学したが、今は就職している。
連絡を取っていなかったが、たまたま駅で会ってしまった。
お互い目が合った時は半信半疑だったが、なんの問題もなかった。
なぜなら、一緒のストラップを付けていたから。
健康祈願のお守りストラップ。
これは卒業式の日にアイツから貰ったものだ。
まだ付けているのかと笑った。俺も、アイツも。
今は3年間付き合っている彼女がいるらしく、同棲していた。
学生の頃からモテていたが、エリートになった今はもっと引く手数多だそうだ。
一緒に酒でも飲もうと誘えば、是非にと付いてきた。
飲んで酔い始めればアイツの口から出るのは彼女の愚痴ばかり。
それほど、言うなら別にしとけよと思わぬ言葉を吐いてしまった。
それでも彼女は良い人だから、と惚気られた。
その一言で俺の恋心は粉砕された。
高校2年からしまい続けたこの想い。
叶うことは無いと知っていながらも、今日会えて少しは希望があるんじゃないか。
そう期待してしまった俺が悪い。
枝豆しか摘んでいないはずの胃が妙に重い。
連絡先を交換すれば、また会おうと別れた。
たまらなく、体が重い。何もしたくない。
一途に思い続けてきた10年以上が肩にずっしりとのしかかる。
喉の奥から深いため息が漏れて、鼻水も出て、涙も出て。
つらいなぁと、言葉で簡単に片付かない程に膨れ上がった想い。
諦めて、希望が見えて、また深く落ち込んで。
1ヶ月後、アイツから結婚式の招待状が届いた。
俺は出席しなかった。
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