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影がある
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ユキが行きそうなところを片っ端から探してみた。
僕がユキを探していることは、カナコちゃんと実には言っているから、僕がいないことで女子が騒ぐことは、減るだろう。
実には、仮を作り過ぎてる。
なんかの形で返さなきゃなんだけど、あいつは物欲というものがないから、いつも笑って「気にしない、気にしない」と言われて終わってしまう。
今どき珍しい、マジで良い奴。
「荒木さん?」
僕を後から呼ぶ声にハッとする。
ユキが泊まる部屋に行こうとしたら、鯉沼也夜(ユキは、ナリヤと呼んでいる)に声をかけられた。
「ああ、こいちゃん」
「その呼び方やめてくださいってば」
僕は、愛着を込めて、「こいちゃん」と呼んでいる。
こいつは、何となく僕と似てるし、他の奴とも違う。何故か、実がすごく気に入ってるし、きっといい奴だ。ただ、ちょっとぶっきらぼうなところがある。
だから、少しでも可愛くしようとそう呼んでいる。
「こいちゃん、ユキしらない?」
「永沢、俺も探してるんですよ。昨日から、全然姿見えないし……というか、あいつの場合、見えないというか見せないんですね」
「なんで、そう思うの?」
「だってあいつ、出会った時から暗いやつでしたから」
出会った時から、暗いやつ?
「あいつ、友達できないの見た目じゃないっすよ。なんか、影が見えるんです。俺は、その影を気にしないけど、気にするやつは気にするから」
「こいちゃんは、なんで気にしないの?」
「さあ、なんででしょうね……でも、気にしてたら、永沢だけじゃなくて、荒木さんにも廊下で見かけても声かけてないと思います」
ふーん。
つまり、僕にも影があると言いたいわけね。
こいちゃん、やっぱり面白い。
この冷たいのか優しいのかわからない感じは、きっと女の子からすごくモテるんだろうな。
「それは、どうも。こいちゃんは、ちょっと不思議だね」
「褒められてますか?」
「うん。ユキと友達になってくれてありがとう」
「別に、荒木さんにお礼言われるとこじゃないです。それに、荒木さんだって、影が見える人と気にせず付き合ってるじゃないですか」
「まあ、僕とユキは昔からの付き合いだしね」
「永沢だけじゃないでしょ。中川さんの方が、俺は……」
「こいちゃん、僕、ユキ探してるから、もし見つけたら僕に連絡してね!」
こいちゃんとは強制的に別れる。
もしかしたら、ユキは外にいるかもしれないと、外に出た。
こいちゃんって、本当に人のことをよく見ている子だ。
僕は今まで、実のことを「影がある」と見抜いた人物を見たことがなかった。
ユキもきっと知らないから、ユキとはそういう話もしたい。
そんなことを考えながら、倉庫の前を通った時、中から何かが倒れた音がした。
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