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お邪魔します
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ナリヤに散々呆れた顔をされ(何故、ナリヤがこのような態度を取るかわからなかった)、俺はガクの家に行くことになった。
後で知ったんだけど、ナリヤは呼ばれてホイホイ着いていく俺に危機感を覚えていたらしい。ナリヤは既に、俺が女顔でそれを必死に誤魔化そうとしていることに気付いていたらしい。
天才かよ。
ガクの家は、S大前駅からさらに二駅行ったところのすぐ側にあった。駅が近いのは、羨ましい。
電車の音とかうるさくないのかな。
第一印象はそれだった気がする。
慣れてしまえば気にならない、というのは本当のようだ。俺が電車の音が気になったのは、初めて行ったこの日だけだった。
ガクは三階建ての一階の角部屋に住んでいた。
何だか、駅から近いし、ボロくないし、絶対に家賃が高いだろうな、と夢見心地で、ドアの前に立った気がする。
ドアは最近新しくしたのか、壁に似合わずピカピカとしていた。
インターホンを鳴らす。
駅に着いた時に連絡したけど、既読がつかなかったから、少し不安になった。
土曜日だからか、駅の周りも何だか人通りがあまりなく静かだった。
インターホンを鳴らして、暫くしてから、ドアが開いた。
「やあ。いらっしゃい」
ニッコリと笑ったガクが、俺を家に招き入れる。
「お邪魔します」
途端に緊張してしまい、いつもはそんなこと気にしないのに、脱いだ靴を丁寧に両手で直した。
それを後ろで見ていたガクは、クスクスと笑っていた。
「ユキ、何だかぎこちないよ」
「人の家に来るのが久しぶりなんだよ」
ぶっきらぼうに言って、ガクを置いて中に進んで行った。ガク相手に遠慮しても仕方ない。
中学の時から、ガクには年上という感じが一切なかった。
中学生といえば、無駄な上下関係を持ち出して、先輩風を吹かせ、最高学年ともなると、まるで自分が世界の支配者にでもなったかのように振る舞うものだが、ガクは違った。
それでも、何故か同じ部活の俺の同級生は、ガクに敬語を使っていた。
「へー。綺麗にしてるんだな」
「ユキの家は汚い?」
「これよりは、散らかってるよ。男の部屋なんてそんなもんだろ」
「僕が異常みたいな言い方やめて欲しいな」
「綺麗に越したことはねーじゃん」
俺がそう言うと、ガクが突然黙った。
不審に思って、ガクの方を見ると、ガクは口だけで微笑みながらこちらを見ていた。
「なんだよ。突然、黙るなよ」
「いや、ごめん。何だか、途端に懐かしくなっちゃって。変わらないね、ユキは」
まるで、自分は変わってしまったと言わんがばかりの言い方だった。
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