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春の章一 風光る
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可児は足早に駆けながら、担任に呼ばれた理由を思い浮かべていた。
思い当たるのは入学式に遅れたことぐらいだが、それは遊命も同じだ。
職員室は生徒が使う校舎とは別の棟にあり、渡り廊下で繋がれている。
外に出ると校舎を取り囲む木々がザッと鳴り、足元で桜の花弁がくるくると舞った。
花弁の行く先につられ、気なしに遊命が降りていった昇降口を見ると、正門とは反対の方向に歩く遊命を見つけた。
人気のない校舎に向かっていく遊命を見て、またつまらないことに巻き込まれに行ってんのかと可児は落胆した。
遊命が強いことは、昨日の一件で分かっていた。
大怪我をすることはないだろうと思うが、同じことを繰り返しても…と、溜め息をついた。
「失礼します」
「可児、こっちこっち」
職員室に入ると担任が、パーティションで区切られたスペースの一画から頭をひょっこり出して可児を呼び寄せた。
「まぁ、座れ」
「何ですか?」
「単刀直入に聞くが、ぶっちゃけ田崎の勉強を見る気あるのか?」
「はぁ?」
担任は前のめりになり小声で続けた。
「今朝、生田先生から可児の承諾を得たって聞いたんだけど」
生田先生というのは、あの上下ジャージ男のことらしい。本気で話を進めていたのかと呆気にとられた。
「冗談で言うてんのかと」
「…かなり本気だ。俺からも頼む」
「いやいや、おかしいやろ。教師が仕事放棄したらあかんやん」
「そう言うけどなぁ、可児。俺としては田崎レベルの生徒が一人でも減ってくれると有難いんだよ。このままいったら、クラスの1/3は進級出来ないという恐ろしい事実をだなぁ、分かってくれや」
「遊命もその中に入ってんのや」
「入ってる、入ってる」
「あいつ、そんなアホやったんや」
「アホっていうか、気がないんだよなぁ…」
担任は眉間に皺を寄せ、頭をかきむしった。
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