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春の章二 霾(つちふる)
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「こんちは」
「何だ、遊命君か」
ピアノの影から女の子がひょっこりと頭を出した。
「あぁっ!? 何でおまえがいるんだよ?」
「昨日、遊命君がピアノ王子がいるって、教えてくれたじゃん。だから、見に来ちゃった」
「見に来ちゃった、じゃねぇよ。ピアノ王子とか言ってねぇし」
「本当に妹だったんだ」
藍が笑いながら言った。
「璃青ちゃんだっけ? 一人で来るなんて勇気あるね」
藍はピアノに向かい、遊命の知らない曲を弾き続けている。リクエストは無かった。
「誰にも会わなかったよ」
「り~あ~」
遊命の言葉に怒気が含まれる。
「見つからなきゃ、大丈夫だって」と、璃青。
「綾哉も見つからなかったし、大丈夫だよ」
藍が璃青に加勢した。
「藍ちゃん、こいつ甘やかしちゃダメだから」
藍はふふっと笑っただけだった。
「遊命も昨日の今日でよく来たね。可児から会うなって言われなかった?」
「言われた。でも、理由訊いても教えてくんないからさ」
「で、もう一人の当事者に、訊きに来たって訳だ」
璃青は黙って二人のやり取りを見ていた。
「俺から言うのもどうかなぁ。可児のプライバシーに関わることだからさ」
「人を捲き込んどいて、自分だけ守られようなんて虫のいい話、あり得ねぇっての」
「…まぁ、そうなんだけどね」
「藍ちゃんも、可児もな」
藍は演奏を止め、昨日の可児と同じ表情をした。
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