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春の章二 霾(つちふる)
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藍は駅から少し離れた小さなコーポの二階の一室を借りて、一人で住んでいた。
2Kの間取りの内、一部屋はアップライトピアノと座卓でいっぱいのになり、もう一部屋はベッドでいっぱいになっていた。
どちらも生活感のない部屋だった。
遊命は招かれるまま、部屋に入った。
「可児には、本当に悪いことしたと思ってんだよ」
「うん?」
「高一の時にしつこく迫るヤローがいてさ」
「ヤロー? 男?」
「うん。やっぱりそこに食いつく?」
「ん? いや、それで?」
「……」
藍は、遊命が好奇心だけで探ろうとしているのかどうか見極めていた。
「藍ちゃん?」
「変だと思わない?」
「何が?」
先入観によって事実が歪曲されて伝わってしまうことが多々ある。藍の両親もそうだった。
ストーカーが男と分かったとき、父親は家から出ていくよう、藍に無断で転校の手続きをし、母親は無言を通した。
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