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春の章二 霾(つちふる)
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たった一人を標的とし、執拗に追い詰めるという構図は、遊命にも覚えがあった。
ストーカーと同時に、周りの環境とも闘わなければならなかった可児を思うと、遊命には出口のないトンネルのように思われた。
「謝ろうとしたけど可児には近づけないし、親は勝手にこっちに転校させるし」
「何で横浜に?」
「俺、元々川崎出身だから。ピアノの先生もこっちにいるし、手っ取り早いから行けって。いい厄介払いだよね」
「ふー…ん」
「俺から言わない方が良かったかな? 遊命は、可児がゲイだって知ってた?」
「…いや…って言うかそうなの?」
藍はぁぁ…と少し困った表情をした。
「やっぱり言わない方が良かった。可児はゲイだよ」
「ふーん…、セクシュアリティってそんな深刻なこと?」
「そう思うのは、遊命が当事者だと思ってないからだよ」
「…当事者…」
「同性から恋愛や性の対象に見られたら悩まない?」
「別に。世の中、男か女しかいないんだから、不思議じゃないよ。好き=セックスは分かる。好きじゃなくても出来るけど」
遊命の言葉に、藍はへぇと驚きを隠せなかった。
「意外。好きじゃない相手としたことあるんだ? 奥手って言うか、鈍いのかと思ってた」
「藍ちゃん。俺は、そんな話をしに来たんじゃないんだよ。今、そのストーカーどうしてんの?」
「さぁ? 被害者が俺から可児に移行したから詳しくは知らないけど、保護観察処分になったっていうのは聞いたかな?」
「保護観察になったってことは、捕まって、裁判も受けたんだ…」
「可児の両親、弁護士だからね。お手のものでしょ」
「でも、保護観察じゃ野放しと変わんないな…。だからか…」
「何?」
「そいつのことがあるから、藍ちゃんに近づくなって言ったのか」
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