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夏の章一 青嵐(あおあらし)
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「ごめん、藍ちゃんから教えて貰った」
授業が始まるまでのわずかな時間に、遊命は可児を連れ立って屋上へと向かった。
約束を破ってしまったことを、己れの中に収めておくことができなかったし、確かめたいこともあった。
「…そんなことやろうと思った。どこまで聞いたん?」
可児は約束を反古されたことに怒っているのか、憮然とした態度で聞き返した。
「…ほ…ほぼ全部」
遊命は申し訳なさそうに上目遣いで言った。可児の口から大きな溜め息が漏れた。
「…何か言いたいことがあんのやろ?」
「…ん、可児はどっちを心配してんの? 中西ってストーカーヤロー? 自分がゲイだって知られること?」
途端に可児の顔が赤くなった。
「……両方や」
可児は蚊の鳴くような声で答えた。
「じゃ、ゲイの方は心配いらないな。俺、藍ちゃんとエッチしたけど嫌じゃなかったし」
「はぁぁぁぁっ!?」
思いもよらない返答に、可児は耳を疑った。
「…あほかっ! 何考えてんねん! そんなんしたら中西がおまえに目ぇつけんで!」
「そしたら、そいつは可児のこと、眼中になくなるじゃん」
「は…、あほ言うな。ストーカーが事件になる時代やぞ」
「俺のこと、心配なんだ?」
「さっき言うたやろ」
「いいねぇ」
「はぁ!?」
「そんなふうに人から心配されたことないからさ、ちょっとくすぐったいけど、いいね」
遊命が、少しはにかみながら言った。
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