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夏の章一 青嵐(あおあらし)
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「可児、俺に喧嘩売ってんのか?」
二日続けて職員室に呼び出されて、一言目がそれだった。
「…あ?」
「あ? じゃない。三教科共白紙じゃねぇか」
「どっかのどグサレ教師に脅迫されて、頭ん中真っ白になってん」
「おまえがそんなタマか。俺のロッカー、ボコボコにしただろ?」
「学校の備品ぐらいで、ガタガタ言うなや」
「何だと?」
「…なぁ、先生。買収の話やけど、俺のやることに口出しせぇへんちゅうのはどうかな?」
「却下だ、却下。そんなことしたら、教師の威厳がなくなるだろうが」
「…威厳て…」
「分かってる、皆まで言うな。俺だって恥を忍んで言ってんだ」
「……」
「可児の実力は、こんなもんじゃないだろ? どうすんだ、田崎」
「藤沢に頼んだらえぇやん」
「藤沢? 二年のピアノ王子か?」
「そいつのこと、気に入ってるみたいやし」
「何だ、ピアノ王子に盗られて拗ねてんのか?」
「ちゃいます」
そんな単純なことなら、ここまで苦労はしない。
昨晩、可児はどこまで学校側が知っているのか、母親に尋ねた。
ストーカー被害に遭ったことは伝えてあるが、藤沢が絡んでいることや、セクシュアリティに関しては伝えてないと、母親は言った。
事の顛末を知らない教師は、呑気にニヤニヤと笑っている。
「まぁ、何にせよ、ピアノ王子じゃ、田崎の面倒は見切れんよ。あいつの学力、中の中だからな。ピアノもあるし」
「俺かて、暇やないで」
流れで言ってはみたものの、特に予定があるわけじゃなかった。
「部活でも入るのか?」
意外そうに、担任が訊いた。
「いや…、そういや遊命の結果ってどうなってん?」
「個人情報だから教えられん。…られんが、地を這ってるよ」
「ふーん…まぁ、気が向いたら教えたるわ。職員室に来んのも、センセといがみ合ってんのも時間の無駄やし」
今、可児にとって遊命の成績はどうでも良かった。
さっさと終わらせたくて、適当に返答した。
「分かった。それで手を打ってやる。それで田崎の成績が上がるなら、俺は何も言わん」
「商談成立やな。いらんこと喋んなよ」
可児は釘を刺すのも忘れなかった。
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