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夏の章一 青嵐(あおあらし)
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可児は、職員用の駐車場に来ると、一枚にした答案用紙を車のトランク部分に貼り付けた。
答案用紙はトランク部分から垂れ下がり、ライトの上部を少し掠めていた。
「よっしゃ、えぇ感じや」
「この車、松本のだろ? いいのかよ」
「えぇねん、弱味握ってるからな」
「へぇー、弱味って何?」
「そら内緒や。誰彼知ったら弱味にならんやん」
「ひょっとしてアレ? 元教え子と結婚しちゃったってやつ?」
可児は、思わず吹き出しそうになった。
「な…何や知ってたんか?」
全くもって初めての情報だったが、これ以上遊命に探られたくない可児は、その情報に乗っかった。
「有名だもん」
「そ…そうなんや」
「それでこれ?」
遊命がトランクから垂れ下がる答案用紙を指した。
「ぴったりやろ?」
可児の中の悪魔が微笑んだ。
「う~ん、…かな?」
プライベートなこととはいえ、棚ぼた的に転がり込んできた松本の弱味に、可児の笑いは止まらなかった。
帰り道の可児は、遊命が訝しく思う程上機嫌だった。
松本は翌日の出勤の際、偶然後ろにつけた同僚から指摘されるまで、
“私は腐った教師です。”
と、書かれた答案用紙をはためかせていた。
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