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夏の章二 清明(せいめい)
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今まで悩んでいたのは、何だったのか、と問いたくなるほど。
「ホンマ考えなしやな」
「考えてるよ。失礼だな」
「ホンマに? どんなんか想像した?」
「想像って…変な検査なのか?」
「いや、血液検査やけど」
「何だ、普通じゃん。精子でも採られるかと思った」
遊命は、頭を拭いていたバスタオルを首に掛け、パソコンを覗き込んだ。
シャワー後の微かに帯びた熱と、水気を伴った清々しい空気が可児の鼻を擽る。
「そらないわ。射精できひんかったら検査にならんやん」
「だよな。ならいいじゃん。可児だって、ちゃんと俺達のこと考えて調べてたんだろ? 」
「おかんのごり押しやけどな」
「それでも。 自分だけは感染しないとか、あり得ないし。どんな魔法だっつーの」
「魔法って…じゃあ、検査すんねんな?」
「うん、いいよ」
「分かった。ただ、三ヶ月後の方がいいねん」
「ふーん、夏休みになっちゃうな」
「うん。でも、その前に」
可児がテーブルに積まれたプリントをポンポンと叩く。
「あー…、それ、俺がやんの?」
「せや」
「だよなぁ…期末もあるし」
「新生田崎遊命を、見せたったらえぇねん」
可児が不敵に笑う。
「誰に? って言うか、何だよその自信。俺を教えるんだぞ? 並大抵じゃねぇっつーの」
「ハハ…何やねん、そのマイナスな強気。やれるもんならやってみぃって感じやな。昨日、徹底的に教えたる言うたから、分かるまで教えんで」
「……」
可児の眼鏡の奥が、キラリと光る。
「覚悟は出来ましたか? 遊命さん」
「…何で標準語? しかも『さん』て」
「返事は?」
──どうやら可児の中の、妙なスイッチが入ったらしい。
「…はーい」
遊命は渋々返事をした。
ふと窓の外を見ると、洗い晒しの制服が風に吹かれ揺れていた。
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