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夏の章三 夏ぐれ
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脚を開けば、また出血するかもしれない。
出血しなくても、痛みを伴うだろう。
リビングを出た廊下は、一気に汗が吹き出そうなほど蒸し暑かった。
「なぁ…これからすること想像すると、すげぇ怖いんだけど」
「……」
「黙るなよ。可児、やったことある?」
「……ない」
「うぅ…やんないとだめか…?」
「…全部洗い流して欲しいんや」
我ながら自分勝手な言い種だ、と可児は思った。
あれほど遊命を犯し、汚しておきながら、その痕跡を消そうとしている。
「…でも、可児のやったことが、消えてなくなる訳じゃない」
遊命に、可児を釘刺すつもりはない。
物理的な後始末をしたところで、可児の後悔が消えるとは思わなかったから。
だが、遊命の思惑とは裏腹に、言葉は言葉通り人の心を突き刺す。可児の心にも深く傷痕を残した。
「……分かってるよ」
「後悔してるのか?」
「……そりゃ……」
「じゃあ、俺も同罪だな。俺が受け入れたから、可児に背負わせた。俺、どうすればよかった? 可児を拒否すればよかった?」
可児は、即座に首を横に振った。
そんなことされていたら、二度と浮上できなかっただろう。
「可児、これは同意だよ。それでも、洗い流したいんだろ?」
「……ん」
「分かった。可児に任す」
ゆらゆらと揺れながら、遊命は可児の額から流れる汗を見ていた。
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