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夏の章三 夏ぐれ
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「あー…確かにこれは想定外やったけど、何の話してたんやっけ? 横道逸れたな」
「離婚すんのやろ?」
「そうそう」
「そ…それはしないで下さい。こんなこと言える立場じゃないけど、離婚されてもあなた達……いえ、何も変わらないですから」
長谷川が消えそうな声で言った。
「そうなん? じゃ、可児家に入る? 結婚は無理やけど、養子になれば可児姓を名乗れんで」
「……まっ…た、おまえは次々と……」
暢宏が、はぁ~と長い溜め息をつき、日出子に対し苛立ちを露にした。
「せやけど、仕事辞めんやったら色々と大変やで?」
「お気持ちはありがたいですが…」
「何でもかんでも型に嵌めようとすな。俺達のことはほっといてくれ」
「そう?」
「もう、ご迷惑はかけませんから」
これ以上関わらないでほしい。
と、長谷川は訴えているようだった。
「遊命、上行こ」
可児は、長谷川の言葉に心底腹を立てた。
虫のいい話をするなと怒鳴りたくなるのをこらえ、ソファから立ち上がった。
「え? でも…」
「えぇねん。もう俺達、蚊帳の外や」
自分を貶めようとした男の顔を、これ以上見ていたくなかった。
申し訳なさそうな顔をする度に、こちらが無慈悲に責めたてているようで気分が悪い。
加害者と被害者の立場が逆転している。
一秒でも早く、この部屋から出たかった。
「立てるか?」
「……ん」
大人達に悟られないよう自然に振る舞うが、動く度に遊命の顔は苦痛に歪む。
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