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夏の章三 夏ぐれ
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ベッドの上でも、今の遊命には負担が大きかった。
身体の奥、下半身から脳天まで、ビリビリと痛みが走る。
息が詰まる。
「……おまえ、何がしたいんだよ」
「……ゴメン……」
遊命の耳元で、漸く聞こえた声だった。
仰向けになった遊命の身体に重なり、肩口に顔を埋めたまま発せられた言葉。
「重いし」
「……ごめんなさい」
囁かれた言葉は、可児精一杯の謝罪。
それは、力で捩じ伏せ、同じ闇へと引きずり込もうとした己れに許しを乞うもの。
遊命は覆い被さる可児の背中を、子供でもあやすようにポンポンと叩いた。
『ごめんなさい』──。
不意の、望んでもいなかったそれだけの言葉が、遊命の全身に広がる。
じわりと胸が熱くなった。
同意だから、謝る必要はない。
と、言おうとして止めた。ここで可児の心意を汲み取らず、我を通せば、気持ちがすれ違う。
今まで真摯に謝られたことのない遊命には、可児の言葉だけで充分だった。
「ちゃんと謝ってくれるんだな…」
「……何で逃げへんかったんや?」
「何でって言われても…殴られたわけじゃないし」
「殴るより酷いことしたやん」
「でも、俺が逃げたらおまえ、こっち戻ってこなくなっちゃうだろ? 俺は可児なら感染しても怖くなかったし。同じ立場になれば、気持ちも共有できんじゃん」
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