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夏の章三 夏ぐれ
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可児が、遊命を抱く腕の力を強めた。
「とにかく一人にさせたらダメだと思って……」
「……あほやなぁ」
「…また考えなしって言われるな、おまえに」
「ホンマあほやなぁ……、レイプした相手に、何で逃げんかったなんて訊くなんて……言うてることホンマ無茶苦茶や」
「……」
己れの言葉で更に混乱を招いている可児を、遊命は黙って見守った。
沈黙の中、浮かんでは消える言葉の羅列に疲れ果て、息をついた可児は、背中に回された遊命の掌の熱と重みに気がついた。
それが、──大丈夫だよ、一人にさせない。
と、言っているようで、再び胸が詰まる。
「ごねんな、遊命」
「…もういいよ。可児だって、長谷川さんのこと許してんだろ? ここに来るまで一言も言わなかったもんな」
「口にしたないだけや。あいつのことなんか、もうどうでもえぇ」
「そっか……じゃ、俺も何も言わない」
「遊命は、怒れや」
「別に怒りたいことなんてないよ。でも…いや、いいや。言わないって決めたからな」
「言ってや」
「……」
遊命は言葉を繋がなかった。
「……遊命?」
可児が顔を上げると、遊命は力なく開いた眼で宙を見ていた。
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