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夏の章三 夏ぐれ
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何を思っているのか、読み取れない表情。
長谷川に対して怒りしかない可児は、遊命の気持ちを推し量ることができなかった。
「何か気になることでもあったんか?」
「…ん……あの人さぁ、もう充分大人なのに、あの年になっても、自分でも説明のつかない行動とっちゃうんだなぁと思って」
可児の脳裏にハテナが浮かぶ。
下でも散々追及したが、出なかった答え。ここで繰り返しても真相は闇だ。
「何でそんな行動とったんか、理由が知りたいってこと?」
「じゃなくて。何でなんて、本人にも分からないのに、俺らに分かるわけないじゃん。そうじゃなくて、大人になっても、そんな説明のできない感情と闘わなきゃならないんだな…って」
「…感情と闘う……?」
「そう。あの人は自分の感情と闘ってた。ずる賢く立ち回ることだってできたのに、それをしないで、自分の感情に真摯に向き合ってた」
「遊命には、そう見えたんや」
「うん。だって嘘つく奴は、平気でつくじゃん。全くの別人が、自分の中に入り込んだ訳じゃない。自分の中で発生してんのに、後から説明出来ないってことは、そんなのと闘って自分をコントロールしなきゃいけないってことだろ? 俺にはそう見えたよ」
「…そやな……」
ふっと伏せた目に、可児の陰を感じた遊命は、取り繕うように言葉を繋げた。
「遠回しに可児のこと言ったんじゃないからな」
「分かってる。俺が勝手に反省してるだけや。今の俺は肝に命じとかんと」
遊命が、小さくフフと笑った。
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