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夏の章三 夏ぐれ
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「うちらは端から見たら、あほな夫婦に見えるかも知れへんけど、子供は子供や」
話し始めた日出子の表情は、挨拶を交わしていた時とうって変わっていた。
「自分で落とした物を、わざわざ拾ってあげたりはせぇへん、自分で拾えぇ言いますわ。せやけど、拾いに行って車に轢かれそうになったら助けます。それは親やからって言うんやなくて、大人としてな」
一人の大人として責任ある行動を取れ、と日出子の目は語っていた。
「一時の気の迷いで、あなたが傷つけたのは、早生だけやない。彼の好きな人も、傷を負うということを分かって下さい」
「……はい」
長谷川は、能面のように、無表情で話す日出子を怖いと思った。
「長谷川さんもな。こんなことしてすっきりしてたんとちゃうやろ?」
「……えぇ」
長谷川は短く答えた。
己れの立場を利用して嘘をついた負い目もある。
でも、胸に空いた虚しさは別のものだった。
「あなたのケアは暢さんにお任せします。これ以上うちに踏み込まれるのも嫌でしょうから」
引き際を告げられた長谷川は、何も言えなかった。
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