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夏の章三 夏ぐれ
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「……こんな面倒臭い男、好きにならなきゃ良かった」
不貞腐れたように、長谷川が呟く。
「はは…よう言われる。いつもそれで振られんねん。真人の言う通り、理解しろっちゅう方が無理やな」
「でも、他の男に盗られるのは、もっと嫌です」
「……そぉか」
「それだけ?」
「それだけって…」
「どうして『真人だけや』って言ってくれないんですか? 理解なんて出来ない。だけど、別れたくない。ましてや他の誰かといるところなんて想像もしたくないと言ってるんです!」
「おいおい、俺に選択権はないで」
「『真人だけや、俺にしとけ』って言って下さい。そしたら…」
「俺が欲しかったら、自分で選んだらえぇ」
「またですか? どうしていつも俺に言わそうとするんです? 分かってるくせに、駆け引きなんて……狡い」
暢宏はこんな、捲し立てるようにして話す長谷川を、珍しいと思った。
その原因が、紛れもなく己れにあることも自覚していた。
変わりたくとも、変われない。大義があるというのも嘘じゃない。
手持ちのカードを全て見せた上で、選択権を与えてるだけなのに、駆け引きと思われるのは癪だ。
暢宏は、溜め息をついた。
「狡いって、なぁなぁにしとく方が狡いやろ。俺に選ばすのんは狡ないんか?」
「はっきり言えば、いいんですか!? 暢宏さん、あなたがいい。これで満足ですか?」
「また、同じことを繰り返すかも知れへんぞ?」
「あなたが言わないで下さい」
「我慢できるんか? 俺は変わらんで」
「我慢できなくなったら、暢宏さんが宥めて下さい。もう、あの人には関わりたくない」
「分かった」
つい、キツい言い方をした暢宏だったが、元の鞘に戻ると胸を撫で下ろした。
今までは、ここで破綻していた。
再び、二人の間に沈黙が流れた。
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