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雪とシロップ...
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ハヤトは生まれてからまだ一度も、雪を感じたことが無かった。
白くて冷たくてすこしふわふわしてたり、凍っていたりするものだという、本の知識ならある。
ハヤトの友人が旅行で北国へ行ったときに送られてきた、写真ならある。
でも、それら全ては自分の目で肌で感覚で感じてみたいものなのだ。
そんな思いとは裏腹に、ハヤトは南国で生まれ育った。だから雪なんかよりもヤシの木の方が身近なものだ。
しかし、思いをかかえてからは金を貯めた。もちろん、雪を感じに北国に行くための金を。
それほど、未だ感じたことのない雪が好きなのか...。そう周りの人間は呆れつつも感嘆した。
金を貯め始めたハヤトだが、彼はまだ若い。そんなに高給料は貰えない。
だから、地道に貯めた。1日いちにち働き、金を貯める。
雪に対して、異常な執着がハヤトの中にあった。その事に気づいた人は多分、いない。でもハヤト自身もなにが自分をここまでして執着させているのかわからなかった。
別にハヤトは、[未だ感じたことのない雪]が好きな訳ではない。
感じてはみたかったが、少し曖昧だったのだ。
いつから、だろう。
多分、感じたいと思い始めるずっと前だ。
幼少期──ずっと昔にされた冷たいけど温かいコトを躰が憶えているのだ...。
冷たくふわふわしたものをを躰に纏わせられ、ぬるぬるぬめぬめとしたものがその上からかけられた。身体は冷たかったが、ハヤトの裸体にコトをなした男からは暖かさを感じた。
ぬるぬるぬめぬめとしたものは甘く、シロップの味がした。
味がした、というかあれはシロップだったのだろう。
今でもあの時の、浮遊感や緊迫感なんかを混ぜて織り成された快感を思い出してしまう。
あの時自分に触れた手は、白くて冷たくてすこしふわふわしていて...まるで雪のようだった。
...雪を感じれたらあの時の彼をもっと鮮明に思い出せるかもしれない。
ハヤトは今日も雪を感じたいがために、金を貯めている。
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