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とりあえず寮まで帰ろうと思い、肩を貸しながら暗くなった道を歩く。
しばらく無言で歩いて校舎から離れた寮が見えてきた頃、委員長が口を開いた。
「お前は欲がぶつけられるのなら誰でもいいんだな」
その言葉は静かな闇に響いて俺の心に沁みる。
恋だの愛だの、不確かで、ともすれば人を不幸にするソレは俺にはできない。
きっと、一生、できない。
「まぁ、自分が楽しけりゃ誰を犠牲にしてもなんとも思わないしね〜」
暗くてよかった。
こんなぎこちない笑み、見られたくはない。
「さいっていだな」
吐き捨てるように言われ、心臓の辺りが軋んだ気がした。
寮に着く。
校舎と張り合う大きさのある寮は、5階建てだ。
1階はロビーで、売店やジムとかいろいろ設備がある。
2階は1年、3階は2年、4階は3年、そして5階は正面から見て右から順に生徒会役員、運動部会会長、各運動部部長、各文化部部長、文化部会会長、寮長、風紀委員の部屋がある。
「いいんちょー、つきましたよ〜」
エレベーターから降りて右に曲がる。
「おい、どこに連れて行くつもりだ」
「もちろん俺の部屋ですけど?もしかしてかいちょーの部屋が良かったですか〜?」
「なぜそうなる、さっさと俺の部屋に行け」
「きゃー、いいんちょーが俺を連れ込もうとしてる〜」
少し引き返して今度は委員長の部屋を目指した。
生徒手帳で鍵の開閉ができるようになっていて、委員長のブレザーの内ポケットを探る。
「おいやめろ、自分で開ける」
「まぁまぁ〜、そんなこと言わずに〜」
委員長の部屋はすっきりとしていて物が殆ほとんどなかった。
ベットとクローゼット、机が1つと椅子が3つ、あとは本棚だけだ。
本棚にはアルバムらしきものが数冊と本がぎっしり。
無駄に広いからか部屋が寂しく見えた。
もう1つある部屋にも本棚があり、そっちはファイルがぎっしり詰まっていた。
きっと風紀の資料だ。
あとは机と椅子が1セットだけ。
キッチンも冷蔵庫とコップがあるだけで、電子レンジも皿すらもない。
「おい、さっさと出て行け」
「ええ〜、今日は金曜日ですし?お泊りしよっかな〜って〜」
「やめろ。お前は暇でも俺には仕事がある。勉強もしたいし、明日だって風紀の仕事で学校に行かなければならない」
「まぁまぁ、邪魔はしないですから〜」
「だめだ」
「写真…」
「ちっ…好きにしろ」
目も合わせずさっさと仕事部屋に入って扉を閉めてしまった。
「さて、とりあえず飯かな」
スマホを取り出して電話をかける。
相手は俺の親衛隊隊長だ。
「あ、柚子(ユズ)?ちょっと頼みがあるんだけど。俺の部屋から適当な調理道具と食材持ってきて。今風紀委員長の部屋にいるから」
それだけ言って電話を切った。
しばらくして電話が鳴る。
それには出ずに玄関の扉を開けると案の定スマホを持って立つ柚子がいた。
柚子はいろいろと俺の特別だから、部屋にも入れるし俺のことをよく知っている。
そんな柚子は顔を合わせるとまず大きな溜息をついた。
「まったく…もうすぐ綾人様付きの使用人たちがこちらに運んできます。さすがに1人では厳しかったので」
周囲には隠しているが柚子も俺の使用人の1人だ。
「ん、ありがとう」
「ところで綾人様?厄介なことをしておられますね?」
「別に、遊んでるだけ」
「…くれぐれも、ご当主様のお言葉は守られますよう」
「わかってるよ」
到着した使用人2人から食材と調理道具を預かり2往復してキッチンに収めた。
「それでは私たちはこれで。また何かございましたらお呼びください」
「ん」
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