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春、出会い
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明け方に夢を見た。特別怖いものではない。が、れっきとした悪夢。
暗闇の中にいた。目が慣れてくると、自分が何人かの大人に囲まれていることがわかった。離れたところから幼い子供たちがこちらの様子を窺っているのも見えた。全員が闇に埋もれ、顔はよくわからない。
「ここ、どこですか」
声が小さかったのか、大人たちは首をかしげるそぶりを見せる。大人たちの背後で子供たちが追いかけっこを始めた。
「…………、……?」
大人の中の一人が自分に何かを尋ねているのがわかる。でも、何を尋ねられているのかはわからない。
他にも数人が何か話しかけてきたが、どれも全く意味を持った言葉には聞こえなかった。声を出せずにただ彼らを見上げていた。そのうちに、一人、また一人と立ち去っていった。最初に声を掛けてきた人だけが残った。顔は見えないのに、悲しそうな表情をしていると思った。その人は最後にもう一度、何かを言ったようだった。そして相手がそれを理解できなかったのだとわかると、さらに悲しそうにして去っていった。子供達も、もういなかった。
闇の中に自分だけが残った。そのとき、もうそこには暗闇が無いことに気が付いた。眩しい光に目が眩んだ。どこまでも真っ白で、どこまでも何も無い。
祐樹は白い闇の中で一人きりになった。
目覚まし時計のベルが祐樹を日常に引き戻す。重い瞼に力を入れて目をこじ開けると、白い天井が目に入る。
目覚めは最悪だった。
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