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春、出会い
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「…というように、太陽系の外にも生き物がいておかしくない星がたくさんあるんです。皆さんも興味があれば、是非調べてみてください」
彼が話し終えると会場は盛大な拍手に包まれた。彼は一礼してステージを後にした。
スピーチは、本人の略歴、天文学とはどういったものかについて軽く説明した後、スライドを用いたいくつかの天体についての紹介で締めくくられるという単純な構成のものだった。
そう、構成は至ってシンプルだった。でも面白かった。簡単な言葉で中高生にもわかりやすく説明されていても、彼の持つ知識の量が膨大であることは明らかだった。それでもそれを鼻にかけるようなそぶりも見せず、程よい割合で冗談を混ぜて笑いを誘った。
声も顔もイケてて、頭が良くて面白くて礼儀正しい完璧超人。背も高いし。そんな奴がこの世に存在するだけでこっちとしては面白くない。それなのに。
「あー、面白かったな」
黒田はもう彼の手中に堕ちたようだ。まあこの人、もともと単純だし。人を妬んだり出来るほど高等な頭脳持ってなさそうだもんな。なーんて。
「いや、あれは絶対なんか隠してる。実はカツラとか、痔とか」
先輩教師は祐樹の言葉に郎らかに笑った。カツラでも痔でもイケメンはイケメンってか。半分で良いからその顔面よこせ。もしカツラならその綺麗に切り揃えられた黒髪ストレートのカツラよこせ、羨ましい。
生徒会副会長の「本日はありがとうございました。後ろから順番に退場してください」という言葉とともに、生徒たちは来たときとは比べものにならない程にぐちゃぐちゃな列を作って教室へ戻っていく。
黒田が立ち上がり、祐樹もそれに倣った。ホームルームで配布するプリント類を取りに二人で歩いて職員室へ向かう。
授業の終了を告げるチャイムが鳴った。
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