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春、怠い
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考え事をしている内に眠ることができていたようだ。
目を覚ましたのはアラームがなる10分ほど前で、眠りに落ちたのが午前2時過ぎ頃と過程しても四時間以上は睡眠をとったことになる。
目覚まし時計の音とともに体を起こすと微かに身体が重たく感じられた。嫌な夢は見なかったが、昨日の朝より気分が悪い。
カーテンを開けると、眩しい光が差し込んでくる。嫌になるほど天気が良い。
軽い二日酔いもあるのかもしれないので、朝食はヨーグルトと果物だけにした。女子か、と自分でツッコミを入れるのも面倒。夜更かしするもんじゃねーな、したくてしたんじゃないけど。
そういえば、とスマートフォンを開く。昨日電車の中で見た黒田のメッセージにまだ返事をしていなかったのを思い出したのだ。
学校でどやされそうだからさっさと返信してしまおう、とトーク画面を表示する。黒田が送ってきた文面を目にした瞬間、目がゴロゴロする感覚に慌ててホーム画面に戻った。目でも疲れているんだろうか。
もう一度一連の動作を繰り返して適当に返信し、スーツに着替えて家を出た。大学を卒業した頃から住んでいる、マンションの三階。普段は階段を使ってエントランスまで降りるのだが、ボタンを押してエレベーターを待った。
外に出ると、部屋の窓から見た景色よりも更に太陽が眩しく感じられた。
最寄りの駅まで歩くか、今日はタクシーでも使ってしまおうか、と逡巡した。結局駅まで歩き、駅の自動販売機でペットボトルのお茶を買って二口ほど飲んだ。
「ちょっと、お兄さん」
改札に入ろうとした瞬間、かけられた声に振り向いた。一人のおばさんが立っている。見た目から推測すると、祐樹の母親と同じくらいだろうか。
「はい…」
何か用事だろうか。急いでいる、と言おうか。事実出勤途中な訳だし。
すぐにおばさんが再び口を開いた。
「顔色悪いよ、ブラックにでも勤めてんのかい?」
その言葉に、祐樹はつい吹き出してしまった。いくらなんでもその言い方はねーだろ!幸いブラック企業には勤めていないが、勤めていたところでいきなりそんな風に話しかけられても困るだろうに。
「いえ。あんまよく寝れなかっただけなんで、大丈夫です」
その後は笑いをかみ殺して答え、「急ぐんで」とその場を去った。
親切なんだか失礼なんだかよく分からないババアもいたもんだ。不意打ちで驚いた。心なしか話しかけられる前までよりも具合が良い。
改札をくぐる。少し時間を食ってしまったが、まだ全然間に合いそうだ。
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