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春、危ない
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「ーーーー危ない!」
その声と共に、視界が回転した。
「いってえ…」
あ、生きてる。
なんて呑気なことを考えながら、恐らくズボンの中で擦りむいているであろう自分の膝を見つめる。そして自分が今乗っかっている歩道に目を移す。
俺、瞬間移動しちゃった?
車が突っ込んできたとき、確かに祐樹はまだ横断歩道の、途中にいた。その後の一瞬、上着を引っ張られるような軽い衝撃があった。そして気が付くと、歩道に転がっていた。
顔を上げると、先程の白い車が遠くへ走り去っていくのが目に入った。改めて血の気が引く。あのままあの場にいたら、と。
「ふう…」
真後ろからため息が聞こえた。人の気配など感じている余裕はなかったので、ひどく驚いた。
「ひっ…!」
「おいおい。命の恩人にそれはねーだろ」
聞き覚えのある低い声がした。声の方に顔を向けると、少し苦しげに歪んだ微笑みがあった。
「せ、瀬戸…さん…」
目の前にいる男が、自分を助けてくれたのか。恐らく歩道から手を伸ばして祐樹のスーツの上を掴み、素早く引いたのだろう。
自分に危険が及ばないとも限らない行為を迷わず行うなんて、どこまでイケメンなのか。
「あぶねーだろ、道路の真ん中で何やってんだ…!」
相手の声は震えていた。
「だって、信号…青だっ...」
た、と言い終わらないうちに怒鳴られた。
「とっくに赤になってただろ!」
「まじ、で…」
恫喝に身がすくんだのを悟られまいと、肩に力を入れた。熱のせいか関節が酷く痛む。
膝立ちでふらつく体を、同じく膝立ちの瀬戸が支えてくれた。今日の瀬戸はスーツではないが、彼のズボンが汚れてしまわないかと、何故かすごく心配になった。
祐樹と向き合った唇がゆるゆると動いた。
「本当に、無事でよかった…!」
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