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春、お見舞い
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瀬戸は早々にうどんを平らげて、台所で洗い物をはじめた。「急がなくていいから、ゆっくり食べてて」の一言に甘え、祐樹は味いながらゆっくりと食事を楽しんだ。
うどんを食べ終え、流しに運ぼうと鍋を持ち上げた。鍋敷きに使われていたのだろう、一枚の厚手のハンカチが顔を出した。
紺色のハンカチには、大小様々の星が散りばめられている。夜空の模様だ。
おっと、早く鍋持っていかなきゃ。
「ご馳走様、美味しかった」
流しに土鍋を置く。すると、すかさず瀬戸が手に取った。
「洗い物くらいするけど…」
「いいよ、ついでだから。今は病人なんだから、人の行為に甘えておいたら?」
「ありがと…。あのさ、」
ん?と瀬戸が祐樹の目を見つめた。祐樹は慌てて目を伏せる。
……顔が近い。
「あの鍋敷きのハンカチ、なんか綺麗だった」
「ああ、あれね。欲しいならあげようか?講師してる大学の天文学サークルの子達が作ったものなんだけど、俺はもう一枚持ってるから」
「まじで!?じゃあ、欲しいかな…」
嬉しい、と思った。
ハンカチが手に入るというのよりは、瀬戸が何かくれるという事実の方が主に。
しかも、お揃いの……。
瀬戸が、俯いた祐樹にさらに顔を近づけて尋ねた。
「あれ、なんで下向くの。やっぱ要らなかった?」
「え、や、いる……けど…」
「何?具合悪いんなら座ってて」
特に具合が悪かった訳ではないが、心配そうにされるとなぜか心苦しく、祐樹はリビングに戻った。
「はあ…」
自然にため息がでる。
俺ってこんなに人と話すの苦手だっけ?瀬戸と話せるのは嬉しいしもっと話したいのに、目が合うとなんか恥ずかしいってゆーか…。
洗い物が終わったのか、瀬戸もリビングに入ってきた。
テーブルの上に残っていた夜空のハンカチをたたみ、脇に寄せた。
その仕草に、少しばかりドキッとする。
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