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初夏、後悔
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この半月間、瀬戸からは祐樹に連絡することが出来なかった。
心配で仕方なかった。だがそれ以上に、帰れと言われた事実に大きなショックを受けている自分がいた。
瀬戸のせいだったのかはわからない。
それでもあれほどに怯えた表情をさせておいて、自分が嫌われていないかということが一番に気になってしまう自分が鬱陶しい。
一番に気にすべきことは、どうしてあれほど怯えていたのかだ。
そして彼が、今でもその恐怖を感じながら日々を過ごしているのか、ということだ。
それでも、ただ会いたい。顔が見たい。
会えば、不快な思いをさせてしまうのかもしれない。また彼に、怯えた表情を浮かべさせてしまうのかもしれない。
だが、そんなことはどうでもいい、とさえ思えてしまう。
苛立ちを、溜息にして吐き出すのももう限界だった。
書斎の机に向かっていた瀬戸は、傍らに無造作に置いてあったスマートフォンを手に取る。
祐樹の連絡先を選択し、メッセージの表示画面まで辿り着いた。
しかし、何を打ち出せばいいのかわからない。
『この間は、ごめんね』とか?いや、違う。まだ自分が原因なのかすらわかっていない。
『なんで帰れって言ったの?』とか。うーん、ちょっと喧嘩腰に取れるかな…
散々迷った末、たった一言『元気?』とだけ打ち込む。
そのたったの二、三文字を、読み返す間もなく送信ボタンを押し、そのまますぐにホーム画面へ戻った。
こんなに短い単語を伝えるためだけに、これほど緊張したのは久しぶりだ。
さて、と再び机に向かった。無論、何かが手につくとは思えないのだが。
返事は、来るだろうか。
祐樹に連絡先を聞き忘れて、もう会えないかもしれないと思ったときがあった。
だが、今はそのときの何倍も、何十倍も怖かった。
連絡先を知っていても。今しがた、送信したばかりだとしても。
返事がこないかもしれないという事実だけが、すごく怖いと感じた。
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