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「倫祢さんは変わった食べ物が好きですよね、イースターエッグといい」
ミサが終わって、2人は夕食を取るために近くの小料理屋へ来ていた。
般若湯が大好きな、現恋人の御堂とよく来るこの店は野菜料理が旨いので、聖職者にもピッタリだ。
「だってさー、食べちゃいけないって言われたら余計に欲しくなんない?」
「倫祢さんだけですよ、あんな目茶苦茶なことして食べようとするのは」
「あの時のシスターの顔、目がこんなに吊り上がってたよな」
倫祢が人差し指で目尻をピンと上げてみせるのを見て敬典は苦笑した。
「あんなに怒られたの生まれて初めてでしたよ」
「でも卵は普通の味だったな」
「俺は食べてませんよ」
「そうだったかな」
倫祢は人より食欲が旺盛だとか食べることが好きだとかいうわけではない。
むしろ同年代の男性と比べたら格段に食が細い。
そんな倫祢の目にも未知なる食べ物はどうしようもなく魅力的に映るのだ。
魅惑のウェファース以外にも教会には未知なる食べ物がもうひとつあった。
それは復活祭をお祝いするイースターエッグだ。
イースターの日にはミサに参加すると色とりどりのセロファンに包まれたゆで卵を貰える。
綺麗に包装された卵をミサが終わってから教会の中庭にあるベンチで割ってみると中身はただの白いゆで卵だった。
倫祢のだけ普通の卵が混ざってしまったのかと、敬典の卵を割ったけどこれも普通の卵だった。
倫祢たちが貰って帰る卵とは別に、ミサの中で神父さまの手で直接祝福を受ける卵がある。
毎年デザインの変わるその卵は卵そのものに綺麗な絵が描かれていた。
自分たちの貰える卵は普通の色で普通の味だけど、あの卵はきっと今までに食べたことがない味がするに違いない。
そう思った倫祢は嫌がる敬典を道連れにして聖堂の脇にある控え室に忍び込み、自分が貰った卵とミサで使う卵をこっそりすり替えたのだ。
卵が入れ替わっているのが発覚したのはミサ本番中だった。
倫祢に入り口で渡したはずの卵を持っていないことを不審に思ったシスターから問い詰められてしどろもどろになった敬典が本当のことを話してしまい、2人はこっぴどく叱られたのだった。
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