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きっかけは何だったのか。
御堂と久々に仲良く食事をしていた筈なのに、大したことのない理由で始まった口論は派手なケンカに発展した。
他の客に迷惑のかからない個室はヒートアップした言い合いには格好の舞台だ。
そもそも説教のプロに口で勝てるはずはない。
何も言い返せなくなった倫祢は無言で箸袋を細く細く折り曲げていた。
御堂の言い分のほうが正しいということは百も承知だ。
倫祢のことを思って言ってくれているのは頭ではわかっている。
だが、優しくて何でも言うことを聞いてくれる敬典と過ごす時間が長くなった今、御堂の言うことが一々気に触るのだ。
そんな優しい優しい敬典もいつかは神様に仕えるために倫祢の元を去ってしまう。
御堂と四六時中顔を突き合わせている未来を想像してみた。
そこにあるのは御堂に正座させられて説教されている自分の姿。
そんな未来は詰まらないことこの上ない。
「……そんなの絶対嫌だ」
「?」
小声での呟きだったので御堂の耳には届かなかったようだ。
「もう帰るっ」
「勝手にすれば」
楽しみにしていたデザートは惜しかったが、上着を掴んで店を飛び出した。
あてもなく歩き続け、頭に上った血が少し冷めてきたころ、敬典の家のある通りに差し掛かった。
(いるかな)
敬典に愚痴を聞いてもらおう。それしかない。
そう心に決めると後は早い。敬典の部屋を目指して一直線だ。
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