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相性は悪くはない。
身体の相性も悪くはない。
けど……急すぎるし、色々と解決しなければならない問題点が目の前に立ちはだかっている。
「嫌ですか?」
純粋な瞳を向けてくる様は宛ら散歩をねだる大型犬だ。
「嫌……ではないけど……色々と問題があるだろ」
「そうですか?」
「あるだろ、教会の事とかさ」
「それなら大丈夫です。新しい教会はそういう事に肯定的なので」
あまりにカラッと答えられるので心の準備が追い付かない。
「そうなの?」
「はい。全然問題ないです」
軽すぎる。
敬典にとって信仰はそれほどまでに軽いのか。
「だけど……あの日の事がなければそのままカトリックに居れたんだろ。昔から目指してた司祭になれたかもしれないのに」
「俺は遅かれ早かれカトリックは辞めるつもりだったんですよ」
「なん……で」
どうしてとか、いつからかとか聞きたい事が怒濤のように押し寄せてくる。
「俺は……罪人ですから」
「はぁっ?」
犯罪とは最も縁遠そうなこの男から物騒な単語が出てきて倫祢は思わず居住まいを正した。
真面目この上ない敬典が犯した罪とはどんなものか気になるが、知ってしまったら何かが終わりそうな恐さもあった。
「な、何をやらかしたんだよ? スピード違反か? シートベルトか?」
どうか軽微な交通違反であってくれと、拳を握りしめて祈る。
「俺、まだ車持ってません」
「あ、じゃあヘルメットか」
倫祢も車を買うまでは原付を乗り回していた。
何としてでも交通系に持っていこうとする倫祢に敬典は軽く微笑んでから、スッとその笑顔を引っ込めた。
「同じからだをもつ相手を恋うこと自体がカトリックでは罪なのです」
真剣な面持ちからどんな「罪」が告白されるのかと身構えた倫祢は拍子抜けしたが敬典は真面目な顔を崩さない。
「何だ、そんな事かよ。お前が罪人だったら俺なんか地獄の最下層に一直線だな。ほら、コキュ何とかってとこでルシファーに噛まれるやつ」
「コキュートスの事ですか? 倫祢さんは信徒じゃないんで大丈夫です。ていうか、そんな最下層に落とされるほど乱れた恋愛してたんですか」
乱れた恋愛。
取っ替え引っ替えというわけではないが、あまり心の伴わない恋愛が多かったのは否めない。
そんな事ができるのも若いうちだけだから思い残す事なく楽しもうと思っていたけど、ここらで落ち着こうか。
どうせ両親も末っ子の倫祢には跡継ぎなんて期待していない。
何か色々ともういいかなと思えた。
「いいよ」
「え?」
「これからお前の恋人な」
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