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遭遇
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【カイside】
__どのくらい走っただろうか。
もう追い掛けて来る人影は見当たらなかった。
やっと落ち着き、周りを見渡すと、何処かの路地だということが分かった。
戻ることは考えていないので入り組んだ道をただひたすら進んでいく。
すると少し広くなっている所に出た。
途端に恐ろしい光景が目の前に広がった。
人が倒れている。男や女様々な人種が首から血を流し血溜まりの中に転がっている。
その中に一人、壁にもたれ掛かっている男がいた。
近づき、「大丈夫ですか?」と声を掛けるが返事は無い。
男の濡れた髪を少し避けると鼻梁の通った綺麗な顔立ちをしていた。
肌を触ると、雨に濡れて少し冷たくなっているが、ちゃんと生きていることが分かる。
「...ん」
気がついたのか、男が目を覚ます。
「よかった....」
安堵の息をもらすと、男に腕を掴まれた。
「遅いよ馬鹿」
_え?
この男は寝ぼけて僕を誰かと勘違いしているのだろう。
眠そうな目でこっちを見つめたまま話している。
「仕事終わったから迎え来てって言ったじゃん。凍死しそうだよ全く。」
この男は仕事の終わりだったのか。でも何故こんなところで寝ているのだろう。そんな疑問は次に男が発した言葉で溶けた。
「血いっぱい出たって言ったじゃん...あーもう早くしないと跡残っちゃうって。雨降ってるけど。死体も早く片付けてよね。腐るよ」
この恐ろしい光景を作ったのはこの男だ。
これはまたまずい状況ではないか。
借金取りから逃げて殺人鬼に捕まる。
最悪の展開だ。最悪の展開には最悪の結末がつきもの。つまり自分はそこに転がっている死体の一つになってしまう__
最悪な想像をしていると、目の前の男が目を見開いた
「....あれ?誰だい君」
気づいてしまった。もう逃げ場はない。
「すいません本当に何も見てません助けて下さいお願いします」
必死になる余り早口で人生初の命乞いをする。
「...ん~どうしよっかな」
そう言って目の前の男はニコニコ笑いながら空いていた方の腕も掴む。
「見ちゃったんだもんね~タダでは帰れないよね~」
明るい口調だが自分には悪魔の声にしか聞こえなかった。
緊張した空気をぶち壊すようにやけに明るい着信音が響いた。バックに入っていた自分の携帯だった。
男は僕の両腕を片手に纏めると、勝手にバックから携帯を取り出した。
発信者は借金の取り立ての男だ。着信拒否にしておけばよかった、と後悔する。
躊躇いなく男が電話に出る。
「はい」
返事をすると僕にも聞こえるようにスピーカーフォンにした。
「あー、月城サン?何処に行ってるんです?早く返して貰えますかねー
逃げないで早く返してくださいねー?じゃないと痛い目見ますよー」
恐ろしい言葉が聞こえた後通話終了が表示された画面に切り替わる。
「.....君もしかしなくても借金だらけ?」
男は携帯を戻しながら聞いてくる。
「....はい」
「ふーん。んで?額は?」
「....一億です」
口にした額に男は笑いを堪えきれないようだ。
「ふっ...ハハハッ....一億って君...ふっ...何に使うのさ」
完全に馬鹿にしたような口調だ。
「違います!...僕はただ友だちの借金を肩代わりすることになってしまっただけで....」
反抗して言うとまた男が笑った
「そんな感じだと思ったよ。お人よしそうだものね君」
_そんなにわかりやすいのか自分は。
「で、そんなお人よしな君には選ばせてあげよう」
__何を選ばせてくれるのだろうか。嫌な予感しかしないが。
「1、このまま僕から逃げる。
2、僕に殺されてそこの死体と一緒に片付けられる。
3、僕のとこで仕事をして一億円稼ぐ。さあ選んで?」
__2は絶対無い。かといって1を選んだとしたら?......野垂れ死ぬか借金取りに捕まってバラバラコンクリート事件のルートに一直線だろう。まさかと思っていたがこれは__
「3が一番オススメだよ?僕のとこで仕事して借金返したあとは気楽にくらせるんだもの。どう?」
__これは三択では無い。元々選ばせる気なんかないのだ。
「..........ん...」
「何?」
「3、でお願いします...」
覚悟を決めて出した答えを伝えると、男は満足そうに笑って一言、
「よろしくね」
と呟いた。
__果たして本当に僕が借金を返せる日は来るのだろうか。
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