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鼠の城(改)・2
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豪と礼奈はれっきとした本当の親なのだが
子供を持つにはこの二人は精神的にも幼過ぎ
若過ぎた。
二人共現在22歳。
杏介が生まれたのはまだ彼らが中学3年になったばかりの頃だ。
もちろん14、5歳の子供が認知など出来なかった為、豪の方の籍に《兄弟》として入れられた。
礼奈は杏介を生んだ直後から育児を放棄、
実質的に彼を育てたのは礼奈の母親、
つまり杏介にとって祖母だったが、
当時一緒にここに住んでいたその祖母も
杏介が3歳くらいの頃には男と行方不明になった。
豪は礼奈を妊娠させたのが発覚直後
親から勘当され連絡を取ろうとしても
取り合ってもらえていないようだった。
豪の両親はちゃんとした家庭を築いていたが
子供に恵まれず結婚5年目にして
養子として豪の義兄【真(しん)】を迎えた。
両親は真と三人仲良く暮らしていたが
それから10年後あんなにも出来なかった実子【豪】を授かった。
豪が生まれてからも
分け隔てなく育てられたが
やはり望みに望んで恵まれた子供ということもあり
甘やかしてしまっていたようで、
中学に慣れ始めると生活は見る見る乱れ始め…
同級生を妊娠させてしまった。
さすがに両親は激怒し中学卒業を機に
『寮のある高校に進学するか何処か住み込みの仕事をしない限り縁を切る! 』と半分脅すつもりで迫ったが
豪はあっけなくその提案全てを放棄し
ありったけの現金を掻き集めて家を出た。
以降豪は実家には寄り付かず、
その仲介役となったのは【真】だった。
義兄の真は豪とは歳が離れているだけあって豪の数少ない味方の一人だった。
真は6年前に結婚して、実家近くに家を建て
そこに妻の【愛美(まなみ)】と共に住んでいた。
望んではいるものの、
こちらも子供には恵まれていない。
その為夫婦で不妊治療の最中だ。
二人共妊娠は難しいと診断されている。
そんな中、
久し振りに顔を見せたかと思うと
金の無心にやって来た豪を前に、
真は頼られるのは嬉しかったが今は大人になった豪自身よりも
弟が子供の頃に作った子供である【杏介】が気になって仕方がなかった。
杏介とは生まれた時と
礼奈の母親が家を出て間なしの頃に会ったきり
だからもう4、5年顔を見ていないことになる。
「杏介は元気か?小学何年だ?大きくなっただろうな。」
夕日の差し込む明るいリビングのソファに座り、
借りた金を数えている豪に真は尋ねた。
「…あ!?ああ、まぁな。」
ポツリと言い、視線を逸らし頭をボリボリと掻いた。
その様子はなんだか釈然としないものだった。
あの夜から母親の礼奈は帰ってこなかった。
数日後行き先を探そうと家捜ししていた豪は
封筒に入った記載済みの【離婚届】を見つけて激怒した。
「あのクソアマッ!!」
突然の大声に杏介は心臓が止まるかと思った。
コレでこの家の収入源は完全に絶たれた。
だが今の豪に仕事の当てなどある訳もなく…
ゴミ溜めのような部屋は一層酷くなっていく。
ちょこちょこと杏介が掃除をしても大して変わらない。
彼女が姿を消して1週間もすればその状態は一層加速した。
学校へは行っていなかったが
本質的に勉強が好きな杏介は
自主的に出来る範囲で勉強していた。
本来なら小学二年生の杏介の教科書は
豪が持ち帰る新聞や雑誌、TVだけ。
それでも色んな紙の余白を見つけては鉛筆やペンを握り、文字や数式を書いた。
歌や体操もTVを観ながらやっていた。
礼奈が出て行って一人きりの時間が増えた。
豪は大概夜中か朝方には帰ってきたが
相変わらず仕事をしている感じはない。
それでも二日に一度くらいの頻度で
弁当やお菓子、パンやインスタント食品を持ち帰ってくる。
それが杏介の《ライフライン》だった。
それらのモノをどうやって入手しているのか…そんな事までは考えられなかった。
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