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「着いたぞ」
遠くから先生の声が聞こえる
俺の大好きな大人な声。
揺さぶられている大きな手も感じる
ゆっくりと目を開けると微笑んだ先生の顔が映る
それに吊られて俺も微笑み返す
俺の周りにはお花畑が広がっているかの様な幸せだった
「良く寝てたな」
そう言って俺の頭を撫でてくれる。これもまた俺の大好きな先生の行動
回り込んでいた先生の前に俺は立ち二人でエレベーターの方へと向かう
「ん、疲れちゃってさ」
軽く笑い声を上げると先生は俺の手を強く握り締める
驚いて先生を見上げるがただ前を見て、俺を引き連れ歩いた
階のボタンを押して来るのを待つ
その間もずっと握っている先生
俺はそれがなんだかは分からないが複雑な気持ちだった
チリンと俺たちが居る所にエレベーターが到着し乗る
会話もなく一歩分先に先生が居る状態だった
先生が住む階に着くが、降りた後の先生の足取りが急に少し早くなった
俺は早足で着いて行く
鍵を取り出して開ける
それが何か焦っている様にも見えどうしたのかと不安になる
開いた扉に直ぐに入り俺も手を引っ張られて引き込まれる
俺たちが部屋に足を踏み入れた瞬間、俺からしたら厚い胸板が頬に当たり肩から廻る腕に包み込まれる
それとほぼ同時位に閉まる扉。
「せ…んせい?」
俺はどこか様子が可笑しい先生の腕に触れた
さっきまでは微笑んでくれたのに、一体どうしたのか
「…怖かったよな、辛かったよな、悲しかったよな
本当ごめん。俺がもっと冷静になってお前に伝えられてたら…」
腕が廻っていない方の肩に顔を埋めている先生から悔しそうな声で放たれる
俺の心を強く締め付け、痛く痛く響く
先生が謝る必要なんて無いんだよ
そりゃあ先生がした事は横暴だったけど、でも助けに来てくれて嬉しかったよ
そう言ってあげたかったけどそれを言えば又先生が自分を追い詰めるだけだと思った
だから、俺は後頭部に手を置き先生以上の強さで抱き締めた
先生が俺にしてくれた様に、包み込んで安心させてあげたい。そう思いながら。
「先生。中入ろ」
何十分と俺たちは抱き合った
空いていた時間を埋める様に、寂しさを埋める様に。
俺の一言で先生は顔を上げた
その顔は酷く傷付いている様子だった
今にも泣き出しそうな、そんな感じだった
そんな顔しないでよ…
なんて言える筈も無く、背中を見せた先生に俺は後ろで必死に涙を堪えた
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