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「母上はいないんだ。落ち着いてくれ。ここは君と私の家だよ」
「う……母上、いないの……?」
「いません」
本当のことだ。
大佐は一瞬だけ迷ったが、キッパリと言った。
「父上は? リーネは?」
「ここにはいません」
「うそ……!」
王子様は悲しそうに首を振った。
しかし、とても嘘をついているようには見えない同じく途方に暮れた様子の男を前に、それ以上の言葉を呑み込んだのだった。
「……お腹が空いたでしょう。朝ごはんにしよう。今日は食堂はやめて、ここで2人で食べようか」
言いながら、大佐は少年を抱く腕を解いた。すぐに執事のタキヤを呼ぶと、あれこれと朝食の指示を出す。
王子様は、しばらくはショックで言葉も出なかった。
「(どうしてこんなことになっちゃったんだろう……)」
そんなことを頭の中で繰り返しながら、ただただ茫然と大佐のことを見つめていた。
*****
やがて朝食とともに部屋にやってきたタキヤは、王子様の姿を見るなりやはり驚いた様子をみせた。
「いやー、リオ王子は話題に事欠きませんなあ。でも大丈夫。あなたにはソウゲツ大佐がついてますからね!」
執事はホッホと笑うと慣れた手つきで給仕を済ませ、2人に礼をして出て行った。
王子様は円形のテーブルに並べられた、湯気のたつ朝食を眺めた。
色とりどりのフルーツに、卵、野菜と豆のスープ。果汁たっぷりのオレンジジュース......。
旨そうだ。
「僕の好きなものばっかり……!」
お腹も空いていたので、思わずゴクリと喉が鳴る。
「君は半熟卵が好きなんだよな? いつも私の固茹でにつきあってくれていたけど」
大佐は熱い卵の殻を剥いてやりながら優い口調でそう言った。トロトロの卵の黄身は、王子の好みの固さである。
「ほら、熱いから気を付けるんだぞ」
「ん、ありがと......」
少年はそれを受け取ると、塩をまぶして食べはじめた。
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