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「私としたことが......すまない!」
掠れた声を絞りだすと大佐はすぐに少年から身を引き、深く頭を下げた。
いくら自分の妻とはいえ、あれは子供にしていい事ではない。欲にあかせて前後を見失っていた。この子はさぞ恐かっただろう。
大佐の顔にはつい先程までイキイキと前戯に励んでいた雄の面影はなく、あるのは我が子を慈しむような保護者同然の愛情だった。
すっかりいつもの紳士に戻っている。
しかし王子様は不安で仕方がなかった。
好きな人が急に自分から離れていってしまったのだから、無理もない。さっきまであんなに注いでくれていた熱も消えてしまった。
何か気を削ぐようなことをしてしまったんだろうか......?
「ソウ、僕、なんかヘンだった......?」
王子様は悲しそうに呟いた。
その表情を窺いながら、大佐はパジャマのボタンに手をかけ、今度は下から一つずつ留めていった。
「怖かっただろう......もう大丈夫だ」
「ん......でも」
「万が一、今度あんなことになってしまったら思いっきり蹴飛ばしてくれ。大声で『イヤだ』と叫んでくれ」
大佐がそんなことを言いだしたので王子様は驚いた。
「イヤだって......チューのこと?」
大佐は頷くと、寂しげに微笑んだ。
「君にしてみれば、私は出会ったばかりのおじさんだ。気持ちは分かるよ」
仮に自分が少年の立場だったとしたら、そんな得体の知れない男にキスなんかされた日にはドン引きするだろうというのが彼の言いぶんだ。
けれどそれを聞かされた王子様はついに我慢ができなくなった感情を大声でぶちまけたのだった。
「チュー、イヤじゃない! 僕、あなたの奥さんだもん!」
そう涙目で訴えると、堰をきったように「好きだ、好きだ」と愛を告白しはじめた。
飽きたらずにもう一度キスをねだると、最後には「あなたはまだおじさんじゃない」と男の自虐にフォローを入れる。
その思いがけない一部始終を大佐は目を丸くして見ていたが、王子様の決死の想いを受け取ったのか、小さな身体を抱き寄せると「ありがとう」と幸せそうに呟いた――。
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